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池・ネオファックスカメラの怪

 去る7月、小惑星「姫路」命名に関して姫路市に行ったとき、西播磨天文台台長、黒田武彦氏のご好意で、同天文台を見学しました。メインは口径2mの大反射鏡で、見た時、一瞬ハワイのすばる望遠鏡のイメージが浮かんできました。それもそのはず、この反射望遠鏡はすばるを作った三菱電機製で、なんと青い塗料も、すばるを塗装したときの残りのペイントを使ったそうです。数名の台員がパソコンの画面と取り組み、遠い銀河宇宙の研究に没頭している様子でした。
 この天文台には、ほかに大小の施設が点在し、その中に特殊な明るいレンズの広角カメラが、小さなドームに入っていました。一見したとき驚きました。それは35年の昔、土佐市の池幸一(いけ こういち)氏が自慢して持っていた「池・ネオファックスカメラ」だったのです。池・ネオファックスカメラとは池氏が資金を出して、京都の光学の専門家、小林義生氏が設計し、木辺氏が研磨したというマクストフ系の特殊カメラで、Fが1.4とか2.0とか言う明るさが特長でした。池氏はこれに多額の費用をかけて完成し、高知県土佐市の繁華な自宅屋上にすえたのでした。目標は彗星の探索でしたが、一発の成果も挙がらないまま数年で幕を閉じました。
 どのような理由があったか分かりませんが、その時岐阜県からSと名乗る男が機械の回収にやってきて持っていったのです。それ以来30年以上の長きにわたって消息を絶っていたのでした。この奇妙な特殊カメラは聞くところによると3台ほど作られたと言いますから、あるいはこれは別物であったかも知れませんが、天文台の係員は、確かに「イケ、ネオファックスカメラ」と呼んでいました。
 当の池幸一氏は、いま千葉県でご隠居の生活ですが、これを見て、一体どのように思われるのでしょうか。1973年の桂浜での彗星会議(第2回目)に、この構想を披露して一演説持った池氏ですが、いまは兵どもの夢の跡、となったのでした。


池・ネオファックスカメラ

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2010年09月10日 23:00に投稿されたエントリーのページです。

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