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七夕の日の思い出

 今年の七夕は珍しく雨にならず、僅かですが星が見えました。今でこそ七夕を個人の家庭で祭ることは、少なくなりましたが、私が幼いころには、毎年、必ずお祭りをしていました。やはりその主役は母でした。少し迷信に偏るところがあったようです。
 中庭に立てた2本の竹を縄で結び、その下に祭壇のようなものを置いて、お供え物をしました。昼間のうちに沢山の色とりどりの短冊にお願い事を書いて吊るしました。夜風がさらさらと吹いて無数の短冊が揺れ、その上にお星様が輝いていました。そうです、そのころの七夕は旧暦で祭ることが習慣でしたから、8月中旬頃の梅雨はとっくに明けて、お天気の安定した頃だったのです。
 ここ上町の空には、まだ見事な天の川が懸かっていたころです。
 涼み台に座って、お年寄りから昔話を聞いたのも懐かしい思い出です。夜が更けると、秋の気配が忍び寄ってきて、肌寒くなりました。

 写真は1915年頃の我が家の中庭での七夕風景です。白い短冊だけしか見えませんか?どうか我慢して下さい。この写真は1世紀も経っているのです。右端に浴衣姿で黒い仔犬を抱いているのが母です。この犬、名前を”エス”と言って大人になって、家のために大活躍するのですが、それは後のお話です。

 それにしても一体、100年も前に誰がこの写真を撮ったのでしょうか?まだライカも生まれていなかった時代に、コンパクトカメラを自作して、現像、焼付けまで自分でやっていたのです。町には写真屋が、まだありませんでした。
 この謎の男は高知県で初めてヴァイオリンを弾きました。そしてラジオ受信機を自作し、遠距離の放送を受信しました。NHK高知放送局が、まだ開業していない時にです。この私の家系での風変わりな人物は後で登場します。一寸した夏の夜のミステリーです。


1915年頃の関宅の中庭
撮影者:関 琴堂

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2010年07月07日 23:00に投稿されたエントリーのページです。

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