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発見と花

 梅雨が上がろうとして、まだ上がらないこのごろ、天文の仕事がないと、余計な事を考えたくなるものです。
 我が家の庭にネムの花が咲いては雨に打たれてしおれています。しかし心棒強い花と見えて、うたれても打たれても咲き続け、その美を表現しようとします。雨に咲く美しい花です。
 戦時中のラジオ歌謡で関種子の歌った歌に「雨に咲く花」という歌がありました。関種子は当時人気の絶頂にあって、私の敬愛した人でしたが、テレビの無い時代で、どのような人であったか、美声を聞くだけで、一度もお顔を知らずに終わってしましました。太平洋戦争がたけなわの頃に、よく歌った「南の国のふるさと」という歌を知る人はもう少ないでしょう。
 倉敷天文台は構内が秋になると、一面のコスモスの花で彩られていました。本田さんの書いた書物によると、1940年10月1日、この天文台に勤めていた岡林滋樹さんは、コスモスの花に包まれながら、明け方の4時30分、東天しし座の中に彗星を発見しました。即ち「岡林・本田彗星」の発見です。
 私ごとでは1956年10月6日の未明、観測所の周辺に咲いたコスモスの花を一輪、オーバーコートの胸のポケットに刺し、観測台に上がりました。そして、しし座のなかに「クロムメリン彗星」を発見したのでした。
 いつも秋がやってきてコスモスが一面に咲く頃になると、昔の発見のことを思い出し、「ああ観測のシーズンがまたやってきたのだ」と思います。コスモスは私の最も好きな花です。



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2009年07月14日 23:00に投稿されたエントリーのページです。

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