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ムルコス彗星の思い出

 昔、お盆は私たちの高知市では旧暦で行っていました。丁度いまごろかもっと遅い時期でしたが、仏様を迎えたり、或いは見送ったりする日は、夜になると各家の門前で火を炊いて、お盆の行事を行っていたのです。その小さな松ノ木による火が消える頃には夜も更けて、そろそろ秋風を感じていたのでした。
 その懐かしいお盆の火の燃えていた頃の思い出です。
 近所の人たちが、門前の道路に「涼み台」をだして、夜な夜な夜の更けるのも忘れ、片手にうちわを持って、世間話に興じていたとき、あるお年寄りが突然、西の空に”ホウキボシ”を見つけて騒ぎになりました。彼らの話によると、正しく道路に沿った西の中天に長さ2尺ばかりの尾を引いた彗星を発見した、と言うのです。ホウキボシはまるで人魂のように青く輝き、夜が更けるまで消えなかった、と言います。涼み台の上での話は、当時の政治の話や、社会でのできごと、生活の不満。さては怪談から星の話になって終わるのが常でしたが、その晩はたまたまホウキボシが出ていて、世間話に一興を添えることとなったわけです。
 そのホウキボシというのが、その年(1957年)の8月初めに発見されたムルコス彗星(C/1957 P1)だったわけです。
 この明け方の空に突然肉眼彗星として君臨した「ムルコス彗星」はその後、暫くして西の空に悠々と見え始めたのですが、実はこの彗星を世界最初に発見した人は、当時横浜市に住んでおられた、倉賀野さんという方だったそうです。1957年の7月下旬、氏は富士山の八合目で日の出を待つ間に、薄明の空にうっすらと尾を引く同彗星を肉眼で発見され、後日東京天文台に報告されました。発見者を知る方々の間では、この彗星は暫くの間、「クラガノ彗星」という愛称で親しまれたそうです。1948年の「日食彗星」が、最初発見者のアメリカの飛行士の名前を取って「マックガン彗星」というニックネームで呼ばれたことを思い出します。

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2008年08月21日 23:00に投稿されたエントリーのページです。

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