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60cmに斜鏡を付けました

 昨夜は皆既月食で芸西の天文台では観測会が催されました。
 約40人(定員いっぱい)の参観者で賑わい、やや雲の多かったものの見事に見えました。やはり皆既中の赤い月は神秘的ですね。
 翌29日は講師の岡村啓一郎さんと、再び天文台にやってきてある作業をしました。天気予報では曇りまたは雨でしたが、お天気の予報と言うものは気象衛星が監視するようになってもなかなか当たらないものですね。今日も朝から暑い快晴でした。四国地方では向こう一週間以上も曇り雨の予報が出ていますが、そのように悪天が長く続くものでしょうか。
 これは今でも笑い話になっていますが、どっかの測候所に「黒松予報官」という人がいて天気予報を下していたそうです。しかし、昔の事ゆえなかなか当たらないので、「黒松」の名が当たらないことのシンボルにされてしまったそうです。大戦中に出征する人に上官が「お前たちは戦場に行ったら『クロマツ、クロマツ』を連呼しろ。さすれば敵の弾に当たらなくて済むだろう」と冗談を言ったと言う笑い話が残っています。
 しかしこれと反対に、ずぶの素人ですが、ある漁村の漁師は天気予報に大変長けていて、長い間の習慣から雲の様子や風向きによってその地方のお天気を見事に予報していたそうです。船で朝早く漁に出かける人はその老人の予報を何より信じて、安心して出かけていたと言います。また私が小学生のとき、自然の好きだった岡本啓先生のお話ですが、ある年の夏休みに足摺岬に近い漁港から船頭を雇って南の離島に地質の調査に出かけたそうです。天気は快晴でしたが、土地の気象に詳しい老練な船頭は、「今日の風向きだと午後にはしけるので、早く迎えに来ます」と言ったそうです。半信半疑で仕事をしていた岡本先生は、午後に入って本当に天候が悪化したので、船頭の予言は正に的中したと驚いたそうです。こうした猟師たちの長い経験に基づく予報術が文献として残らなかったことは極めて残念ですが、天気予報というものはあながち数値ばかりに頼るのではなく、現場に立ってのある程度の勘というものが必要ではないか、と思いました。
 さて天文台では今の60cm反射鏡に斜鏡を取り付ける作業を半日かかりで行いました。芸西の60cmは天体写真儀ですから、ニュートン式の斜鏡を付けて横から覗く形式にしていなかったのです。天文台開所以来倉庫に眠ったままになっていた25cmの副鏡を初めて装着し、60cm鏡がダイレクトに覗けるようにしました。斜鏡はなんと重量が16kgもあり高いところでの作業が困難を極めましたが、危険を犯しながら何とか装着しました。鏡筒のバランスを完全に取りました。これで今まで出来なかった60cm鏡によるあらゆる天体の眼視観測が可能となります。そして写真は6x7のサイズから一回り小さな35mmのフルサイズとなります。つまり今まで20cmの屈折に頼っていた眼視が本物の看板どおりの60cmで覗くこととなったわけです。
 さーて、視野平坦化レンズを取り除いた完全なパラボラ鏡のイメージがどの様なものか、近日これで写真を撮ってお眼にかけましょう。

8月28日の月食
芸西天文学習館で川添晃氏写す

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2007年08月29日 23:00に投稿されたエントリーのページです。

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