夏の甲子園の野球大会が始まり、そして8月15日の終戦の日が近づいてくると、暑いながらもどことなく秋の気配を感じるようになります。芸西村の天文台では季節を先取りして、早くもつくつくぼうしが鳴いています。草木は長い夏の倦怠からか力なく萎れ、秋風が幽かにそれを撫でています。
天文台のメインの60cm反射望遠鏡は致命的な故障で7月から稼動しておらず、どうやらメーカーの「ゴトー」も匙を投げたようです。然し見学者は依然多く、暑い中、星の研究に熱気が溢れています。
いま話題の小惑星「おるき」が近づいています。パソコンの上ではみずかめ座にあって19等。間もなく衝に来て明るくなろうとしています。このままでは恐らくキャッチすることが不可能で、予定されていた10月の「おるきを見る会」もおじやんになりそうです。
さて夏の怪談シリーズの最終回ですが、前に述べた午前3時になるとドームの窓に映る”黒い影”の正体も結局分からないまま時が経ってしまいました。天文台の近くの古池にはかっぱ(河童)が住んでいるとか、昔、人が飛び込んで、その怨霊が徘徊するとか、聞いただけでもゾーッとする噂がありましたが、所詮それは現実味のない怪談に過ぎないと思います。かっぱの子孫がえんこうと言われ、土佐には昔、川に住んでいたそうです。大変泳ぎの上手な動物で、近くには「えんこう様」を祭った神社もあります。そして水泳のクラブに「えんこう会」と言うのがあって、実は私もそれに所属しています。釣りが好きだった高知県佐川町出身の推理作家「森下雨村」氏の最期の作品に「えんこう川に死す」というのがあり、えんこうは結構有名な存在です。20年余り前、天文台の入り口の近くに、得体の知れない動物の死骸がありましたが、もしかすると、これが”池の主”であったかも知れないと思っています。
京都市伏見区の酒蔵で見たかっぱの図
さて最後に登場するはいとも珍奇なお話です。今からかれこれ10年にもなりましょうか、晩秋の丁度しし座流星群の見られる時期でした。例によって天文台にやって来た私は、60cm鏡で天体のパトロール撮影をやりながら、スリットの上に展開するしし座の流星をじっと数えていました。
11月の中旬とはいえ、冬を思わす寒い晩で、私はドームの中の壁に掛けてあった1年越しの古いオーバコートを引っ掛け、ポケットに両手を入れて空を見ていたのです。流れ星を数えながら無意識に右の手でポケットの中の紐のようなものをモミモミしていたのです。「アッ 火球が飛んだ!!」と夢中になって尚もそのつるつるする感じの良い紐を揉んでいたのです。
その”ひも”が何であったか、今思い出してもゾーッとします。 突然その紐はぬるぬると動いたのです!「紐なんか入れてなかったはずだ」と思って引き出してみると、私の右手にぶら下がったものは、何と冬眠中の1匹の蛇だったのです。突然のことで蛇も吃驚したでしょう、床に落ちた蛇は体を大きくくねらす様にして床の隅の方へと逃げて行きました。どうやらこれは体長50cmほどの青大将だったようで、もしまむしだったらと思うと、今思い出しても恐怖は去りません。
天文台が雲って星が見られない晩には、星座のお話や、時々そのような怪談をしてお客さんに楽しんでもらっています。
そうそう、矢野絢子(やの じゅんこ)さんの「おるきの歌」もCDで聞いてもらっています。
天文台のメインの60cm反射望遠鏡は致命的な故障で7月から稼動しておらず、どうやらメーカーの「ゴトー」も匙を投げたようです。然し見学者は依然多く、暑い中、星の研究に熱気が溢れています。
いま話題の小惑星「おるき」が近づいています。パソコンの上ではみずかめ座にあって19等。間もなく衝に来て明るくなろうとしています。このままでは恐らくキャッチすることが不可能で、予定されていた10月の「おるきを見る会」もおじやんになりそうです。
さて夏の怪談シリーズの最終回ですが、前に述べた午前3時になるとドームの窓に映る”黒い影”の正体も結局分からないまま時が経ってしまいました。天文台の近くの古池にはかっぱ(河童)が住んでいるとか、昔、人が飛び込んで、その怨霊が徘徊するとか、聞いただけでもゾーッとする噂がありましたが、所詮それは現実味のない怪談に過ぎないと思います。かっぱの子孫がえんこうと言われ、土佐には昔、川に住んでいたそうです。大変泳ぎの上手な動物で、近くには「えんこう様」を祭った神社もあります。そして水泳のクラブに「えんこう会」と言うのがあって、実は私もそれに所属しています。釣りが好きだった高知県佐川町出身の推理作家「森下雨村」氏の最期の作品に「えんこう川に死す」というのがあり、えんこうは結構有名な存在です。20年余り前、天文台の入り口の近くに、得体の知れない動物の死骸がありましたが、もしかすると、これが”池の主”であったかも知れないと思っています。
京都市伏見区の酒蔵で見たかっぱの図
さて最後に登場するはいとも珍奇なお話です。今からかれこれ10年にもなりましょうか、晩秋の丁度しし座流星群の見られる時期でした。例によって天文台にやって来た私は、60cm鏡で天体のパトロール撮影をやりながら、スリットの上に展開するしし座の流星をじっと数えていました。
11月の中旬とはいえ、冬を思わす寒い晩で、私はドームの中の壁に掛けてあった1年越しの古いオーバコートを引っ掛け、ポケットに両手を入れて空を見ていたのです。流れ星を数えながら無意識に右の手でポケットの中の紐のようなものをモミモミしていたのです。「アッ 火球が飛んだ!!」と夢中になって尚もそのつるつるする感じの良い紐を揉んでいたのです。
その”ひも”が何であったか、今思い出してもゾーッとします。 突然その紐はぬるぬると動いたのです!「紐なんか入れてなかったはずだ」と思って引き出してみると、私の右手にぶら下がったものは、何と冬眠中の1匹の蛇だったのです。突然のことで蛇も吃驚したでしょう、床に落ちた蛇は体を大きくくねらす様にして床の隅の方へと逃げて行きました。どうやらこれは体長50cmほどの青大将だったようで、もしまむしだったらと思うと、今思い出しても恐怖は去りません。
天文台が雲って星が見られない晩には、星座のお話や、時々そのような怪談をしてお客さんに楽しんでもらっています。
そうそう、矢野絢子(やの じゅんこ)さんの「おるきの歌」もCDで聞いてもらっています。