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スイフト・タットル彗星の思い出

 8月15日の終戦の日が過ぎ、夏の高校野球が終わる頃には、お天気も安定し、そろそろ秋の兆しが見えてくるものです。暑い屋根瓦に染み込む蝉の声も心なしか静かで、威勢の良いつくつくぼうしの声が混ざるようになります。
 今年のペルセウス座流星はお月様もあった関係で眼視では余り見ることが出来ませんでした。
 この流星群の母彗星は「スイフト・タットル彗星」と言って130年ほどの周期を持っていますが、この彗星が最初120年の周期と見られていたのですから、1960年代から多くのコメットハンターによる捜索が試みられました。芸西でも60cm反射望遠鏡が完成する前の1980年には、写真的に相当探したようで103a-Oのプレートを使った掃天写真が24枚見つかりました。無論正規の位置から外れていますが、当時1枚が800円近くもした高価なコダックのガラス乾板をふんだんに使ったことを見てもいかにこの捕り物が大掛かりでその発見が価値高いものであったかがわかるでしょう。
 一旦現れたら肉眼的な大彗星です。そして大きな軌道はこの彗星を何ヶ月にも渉ってみせてくれます。しかし最初の周期(120年)を5年ほど過ぎて見つからないとみると気の早い学者が「もう既に通り過ぎてしまったのだ」と言い始めました。しかし眼視的な明るい彗星がやってきて何ヶ月も天空上にある時、今の多くのコメットハンター達が見落とすことは万に一つもないと考えます。この様な事は観測をやらない人の考えです。私は当時OAAの「天界」等で「必ず現れるから熱心に捜索するよう」と盛んに宣伝していました。
 そして最初の予報から遅れること約10年、スイフト・タットル彗星は予測どおり悠々と現れ、暫くのあいだ”夜空の女神”の名を欲しいままにしたのです。先にバーナード2彗星が100年越しにリニアによって確認されましたが、これはスイフト・タットル彗星に比べると大変に暗い小さな天体でした。もしリニアが引っ掛けていなくとも眼視捜索者の誰かの目に止ったと思います。この彗星は最大9等級に達し7x50の双眼鏡で見えたと言う報告もあります。
 彗星が約10年遅れて現れたお陰で芸西では60cmの完成に間にあい、尾を引いた美しい姿を撮影する事ができました。

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2006年08月21日 23:00に投稿されたエントリーのページです。

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