« 黒い魔物 | メイン | ポケットの中の蛇 »

まだらの紐

 コナン・ドイルの作品の中に「まだらの紐」という怪奇小説があります。
 終戦直後の1946年頃この作品が海野十三(うんの じゅうざ)の訳による放送劇でNHKで数夜に渉って放送され、そのスリルとサスペンスは今でも私の体の中に沁み込んで離れません。何でも寝室のベッドの丁度顔の上に天井から紐がぶら下がっていて、これはどうやら隣の部屋と連絡するための引き紐だったようですが、夜中の3時になるとこの紐を伝って毒蛇が降りて来るという設定です。蛇に食われた人はこれをまさか蛇とは思わず「天井からまだらの紐が、、、、、」と言って息が絶えるという恐ろしい下りです。
 私もこれに似た経験を持ちます。
 天文台のある芸西村は昔から毒蛇の一種である「マムシ」の産地で、室戸岬に通ずるこの山脈にはたくさんのまむしが居ると恐れられています。そのくせこの20年間天文台附近では1回もまむしを見かけたことは有りませんが、しかし恐ろしい事件は1998年の夏から秋にかけて起りました。
 それは蒸し暑い8月の夏の晩の出来事です。いつもの通り天文台にやってきた私はドームのドアをあけて暗い室内に入りました。そうして60cm反射望遠鏡を操作しながら徹夜の観測を始めたのです。目標は夜半の南天の小惑星の探索です。南に少し傾いた鏡筒を操っている時、白いドームの天井に何か黒い影が映っていることに気付いていました。しかし別に気にするわけでも無く、その下で3時間にわたって作業を続けました。無論その間、何回かドームを回して天窓の位置を変えました。作業が一段落して、今度は彗星の観測に移る時、何気なく空を仰ぎました。その時見ました! 1匹の黒い大きな蛇が天井にぴったりとくっついて、頭を下の方に下げているではありませんか。「もし落ちてきたら、、、、」そのときの恐ろしさもさることながら、蛇の下で一晩中作業を続けたことにぞっとする戦慄を感じました。体長1メートル半にも達するこの黒い蛇は何と言う種類でしょうか? 蛇の目的は恐らく天井のスリットの隙間に巣を作っている雀を襲うのだったと思います。
 いつかのNHKの海外での洞窟を探検する番組で、蝙蝠が一匹も居ない洞窟があり、不思議に思って暫く中を調べている時、暗い洞穴の奥のほうからジリジリという得体の知れない足音?が近づいてきます。カメラマンの強烈なライトに浮かび上がったものは口を大きくあけ、今にも襲い掛かってこようとする赤いまだらの大蛇だったのです。 
 さて次回は、これも蛇にまつわる怪談ですが、世にも珍奇な事件です。今でも思い出すたびに背筋を寒いものが走ります。

About

2006年08月10日 23:00に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「黒い魔物」です。

次の投稿は「ポケットの中の蛇」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。