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闇に光る目

 むかし「午前3時のブルース」という曲がありましたが、午前3時に決まって天文台のドアに映る黒い影の正体とは一体何者でしょうか?この黒い影の正体を暴く前に、私はこの天文台の置かれた環境について少々お話しなくてはなりますまい。
 天文台はここ芸西村和食(わじき)の標高120mの小山の上にあります。天文台から南2kmに蒼茫たる太平洋が望めます。天文台から東はすぐ谷になっており、いまは人の通らなくなった”けものみち”が谷底の底なし沼に通じているのです。この古い沼から何者かが這い上がって来るのではないか、という恐怖をいつも感じていました。
 ある晩のことです。夜遅く天文台にやって来た私は、普段とは違う道を選んで天文台のすぐ北側の頂上の広場に車を停めました。ここからは山道を上がるのと違って、楽にドームまで到着するのです。車から降りると昼間なら海の見える南側の斜面をほんの20mも降りるとドームに辿り着くのです。その時、幅1m余りの例の”けものみち”を渡るのですが沼に降りるその道は途中鬱蒼とした樹木に覆われています。


怪物の目が光ったけものみち
谷底の池に通じている

 50mほどの先に深い森が見えているのですが、懐中電灯を照らすと2つの蒼い目玉が浮かんだのです。森の中には何か得体の知れない動物が居る。それをわたしは「森の主」と呼んでいるのですが、その強力なライトの光を浴びて光る目玉は、犬や猫にしては大きいのです。天文台に通うわたしはいつも何者かに見られているような恐怖を感じていました。
 それから数時間経って観測が終わり、同じ道を通って車に帰るとき、もう一度同じ場所から森の中を照らしてみました。然しその2つの光る目玉は無くなっていました。明らかに移動したのです。この光るものは地上の物体ではない、明らかに動物のものです。いつかその森の主に会うことがあるかも知れない。と思いながら、それからかれこれ1年ほど経った秋の初めごろの出来事で御座いました。

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2006年07月24日 23:00に投稿されたエントリーのページです。

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