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七夕様の思い出

 今年の七夕も星が殆ど見えませんでした。しかし夜半になって西南の空に沈んで行く月と木星がはっきりと輝きました。そして天頂にはいつもより蒼い織女が光っていました。梅雨の中の職女星は特に青く感じるのですが、気のせいでしょうか。所詮梅雨の晴れ間で観測出来るような状態ではありませんでした。
 子供の頃の七夕様は旧暦で祭っていましたので、いつも空はよく晴れて天の川が市内でも見られました。夜風に騒ぐ竹の短冊がサラサラと音をたてて、まるで天の川のせせらぎの音を聞いているようでした。今の8月の中旬頃の事でしたでしょうか。半月が西に沈む頃には、風が肌寒くなって、中庭の涼み台から座敷に入りました。そのような時、玄関前の道路の涼み台では、近所の老若男女が集まって、夜が更けるまで話に夢中になったものです。
 土佐の昔話に怪談。お年よりたちによって貴重な昔の話が子供たちに伝えられ残されて行ったものですが、今ではこのようなチャンスはなく、学校では教えられないような土佐の昔の出来事は消えて行く運命となりました。高知市のここ上町で人魂や蜃気楼を見た珍しい話も、こうした涼み台での集まりでお年よりから聞いたお話でした。台風が近い夜なんか、集まってきた近所の人のなかに気象学者がいて、「皆さん風の中心を教えてあげましょうか。風の吹いてくる方向を背にして左手を挙げた方向が台風の中心です。」と言っていたことが印象に残っています。昭和10年頃のことでしょうか。驚く無かれ、その頃は台風の予報なんか出ていなかったのです。今のようにレーダーは無いし、気象観測用の飛行機も飛んでいない。無論気象衛星や報道するテレビもない。台風の発生する南方は大戦前夜の敵国なのです。われわれは風が吹き出してから初めて「しけが近づいているらしい」としかわからなかったのです。その頃私の祖父が体験して語ってくれた路上を転んでいく”きつね火”の話なんか鬼気迫るものがありました。

 さてさて雨が降って観測のない退屈ないまどき、時折、土佐の怪談でもお話ししましょうか。また明日をお楽しみに。

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2006年07月07日 23:00に投稿されたエントリーのページです。

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