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 今年も秋たけなわの

 今年も秋たけなわの10月11日がやってきました。今から44年前の今日、初めて新彗星の発見に成功しました。あの日は見事な秋晴れの1日でしたが、今日は秋雨前線の停滞する小雨の日になりました。
 あの頃は10年余りやった捜索の仕事に敗れ人生に迷っていた頃でした。それまで長い間愛用した15cm反射望遠鏡と訣別し、新たに開発した口径88mmの屈折式広角コメットシーカーのテストを兼ねた最初の捜索の日でもありました。
 午前4時30分、東の低い屋根の上にしし座が大半の姿を現していました。この広角コメットシーカーは薄明の中、短時間に出来るだけ広い天空を捜索する目的に製作されていました。視野は3度半、30分もあれば東天の大半を捜索し尽くすほどでした。筒は地平線に対して水平に移動し高い高度から次第に地平線へと移動する最もオーソドックスな方法です。こうして午前5時過ぎ捜索を終了するのですが、午前4時50分、鏡筒はしし座のある一点に静止したまま夜明けを迎える事となったのです。そうですそこには異常が認められたからです。即ち5時が近くなって、うす明るくなった薄明を押し返すようなつもりで捜索していた私の視野に突然ほんのりとした白い光体が浮かんだのです。過去10年の修行と経験はそれを迷う事なく即座に新彗星と断定しました。
 その後発見していつも気づく事、それは「今日も何にも考えずに捜索に専念出来たなあ、、、、、」ということでした。実際15cmを使っていた若い時代は必死にやったものの心がいつにならず常に動揺していました。つまり発見を意識しすぎて、見えるべきものも見えていなかったのです。それにもう一つ、素晴らしい切れの88mmコメットシーカーは私の心を統一さすに十分な星像を展開してくれたのです。この苗村レンズと、エルフレ33mmアイピースの相性もとても良かったのです。私から15kmほど西の町のIさんは同じ朝、10cm、25倍の反射で同じ天空を捜索しながらこれを見逃しています。視直径2′のこの小さなコマは8等星といえどもレンズと眼が良くないと恒星にまぎれて見逃します。それに精神の統一と言う事も大事でしょう。
 この最初の発見はその後の私に大きい自信と一つの捜索の在り方を教えてくれた意義ある発見でした。
 この雨が上がればやりましょう。いつまでも現役で仕事を続ける人間にのみ、生きることの喜びと輝きがあるのです。

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2005年10月11日 23:00に投稿されたエントリーのページです。

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