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なかなかしぶといホームズ彗星

 なかなかしぶとい彗星ですね。
 ここ芸西天文台では、まだ肉眼で悠々と見えています。
 コマは大きくまるで綿菓子のように膨らみ、2月8日に関が70mm10xの双眼鏡で見たところ、5.1度の視野の三分の一もありました。1.7度というところでしょうか。しかし20cm40xの屈折鏡で見ても、拡散したコマは全然見えません。肉眼か明るい双眼鏡の世界です。
 こうなると全光度の推定が大変に難しくなります。例えば三角座のM33は7等星の銀河と言われていますが、私が30年ほど前に岡山天体物理観測所の188cm反射望遠鏡を覗いたところ、大変に暗い天体でした。しかし芸西では肉眼で幽かに見えるのです。全く信じられないことですが、このようなことが現実にあるのです。今回の異常に拡散したホームズ彗星は、そのコマ全体の暗い輝きを、もし一点に集めたとしたら、意外と明るい光度になるかもしれません。これが全光度と言うものです。
 このつかみ所のないモーローとしたホームズ彗星を見ている時、ふと地球の第二衛星のことを思い出しました。もうかれこれ40年にもなるでしょうか。ある天文学者が月から90度はなれた所に力学的にいって宇宙のチリのような天体が集まって、モーローとした地球の第二の月を形造っている、と言って自らチェコスロバキア(現・スロバキア)のタトラ山中の非常に空の暗い山に入り35mmカメラで確認した、というのです。このことが一般に広まるようになって、猟奇な事件に興味を持つIkeさんが早速F値の明るいレンズの付いた35mmカメラを持って冬の凍る石槌山系(1982m)に上がり撮影を試みたのです。イケヤ・セキ彗星の発見されたすぐ後のことで、彗星が白昼太陽のコロナの中に入ったときには、海に山に、まさに東奔西走の活躍を続け、時には大変な危険をも犯して、”天文冒険家Ike”の名をほしいままにしました。
 暗くモーローとしたホームズ彗星をじっと目を凝らして見ているとき、あのときの第二の月も丁度このようなイメージかもしれないと思い、ふとあの頃のことを懐かしく思い出してしまいました。


17P/Holmes(ホームズ彗星)
中央の明るい星はペルセウス座のベータ星で、
その左にある拡散した幽かな光芒がホームズ彗星
2008年1月25日 20時00分から10分間露出(J.S.T)
Nikon FM 135mm F2.0 Fuji 1600フィルム

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2008年02月08日 23:00に投稿されたエントリーのページです。

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