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奇妙な赤い星

 5月19日の夜から20日の明け方にかけて観測しました。
 いま眼視で見えている彗星は夕空の北空を西進中のC/2007 E2 (Lovejoy)と朝方東天に高い96P/Machholzくらいのものでしょうか。Lovejoyの方は20cm屈折望遠鏡で覗くと11.5等位のかすかな光斑で、60cm反射望遠鏡での写真では15等くらいの鋭い核があります。間もなく眼視では見えなくなるでしょう。一方太陽に接近して明るくなったマックホルツ彗星ですが、この日全光度としては12等位ですが、モーションが早いので60cmで10分位の露出を行うと鋭い恒星状の線を引きます。極めて淡い光芒が大きく拡がっているようです。これはFの暗い反射鏡の写真では残念ながら写りません。

96P/Machholz
2007年5月20日 2時30分(J.S.T)から10分露出
芸西天文台 60cm F3.5反射望遠鏡
TX400フィルム

 さてドームの中での一連の観測を終えてから、夜明けまでの1時間余り、スライドルーフの小屋に移動して捜索を行いました。アンドロメダのM31やM32が驚くほどの明るさで入ってきました。空の透明度は非常に良いようです。つい先刻から気が付いていましたが、アンドロメダのガンマー星の5度ほど西に珍しく赤い熟れたほおずきのような色をした2等星が輝いています。15cm25xで視ると明らかの30"くらいの丸い円盤体で、視野に入った瞬間「火星だ!」と思いました。接近中の火星のイメージそっくりだったのです。しかし良く考えてみると、このように黄道から北に大きく外れた位置に惑星が存在するはずがありません。完全に静止した2等星です。しかも夜明けまで30分以上も輝いていたのです。「一体この星はなんだろう?」と思いながら視野をはずしてしまったのです。そのとき実はまだ火星としての認識が高かったのです。
 帰宅してから大いに疑問が残りました。詳しい位置は分かりません。しかし経緯台には幸いなことにナビをセットしてあり、それで観測した位置を野帳の片隅にメモしてあったのです。
5月19日27時30分(20日3時30分)
赤経 1時38分
赤緯 +44度30分(但し分点は2007.5)
光度2等
肉眼で見た光景でも、青いガンマーと並んで、ほぼ同じ明るさで真紅に輝く恒星の姿は異常でした。
 先の5月16日に、中国の紫金山天文台で2.7等の星が発見され、その後消息を絶つ事件がありましたが、今回の場合も、もしこのまま消えたとすればミステリーですね。アンターレスよりも赤いあの星の正体は一体なんでしょうか? 早くも夏空の怪談です!!

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2007年05月19日 23:00に投稿されたエントリーのページです。

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