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池谷・村上彗星の再来


 2010年に日本で眼視的に発見された彗星が帰ってきました。
 再観測の事情は、このホームページの「新天体発見情報」に出ています。
 いま19等星ですが、芸西天文学習館でも観測しました。核がAとB、2つに分かれており、B核が主核であると言われています。写真は芸西の70cm反射望遠鏡によるもので、下元繁男さんによって画像処理さたものです。短い曲がった尾に注目してください。今回の出現は最大でも18等位にしか明るくならないようで、アマチュアには困難な対象となっています。
 然し2010年には静岡県の池谷薫さんと新潟県の村上茂樹さんによって眼視的に発見されました。この年は彗星の標準光度が特に明るかったのでしょうか?池谷さんは25㎝反射望遠鏡で、また村上さんは46cmのドブソニアン望遠鏡で発見しました。それが周期約5年の短周期彗星であることが判明したのです。今回の検出は記念すべき最初の出現でありました。
 2007年に新潟県で「彗星会議」があった時、今回の彗星の発見前の村上さんに会いました。彼は会場に46cmの反射鏡を鞄に入れて持って来ました。観測に出かける時には経緯台と共に車に積んで出かけるそうです。そして現地で組み立てて観測に入ります。夕方、西の空を捜索して、もし月のない闇夜なら、車の中で寝て今度は明け方の東天を捜索するそうです。
 こうした移動観測者は昔から沢山いました。アメリカのスイフトは新彗星(13個)と沢山の銀河の発見に成功した人ですが、彼は家から1kmほど離れた工場の屋根の上を捜索の場所に選んでいました。屋根は3つの階段を登りつめるのですが、冬の寒い朝なんか瓦が凍っていて、這うようにして移動したそうです。氷点下の気温の中で、暖は全く取らず、夜明けと共に体も凍てついたと言います。こうした努力を踏み台にしてあの輝かしい成果があったのです。
(参考までに)
 彼の発見した周期130年のスイフト・タットル彗星は夏のペルセウス座流星群の母彗星になっています。

[P/2010 V1 = 2015 Y2 (Ikeya-Murakami)]
P/2010 V1 = 2015 Y2 (Ikeya-Murakami)

[P/2010 V1-B = 2015 Y2 (Ikeya-Murakami)]
P/2010 V1-B

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2016年01月26日 06:49に投稿されたエントリーのページです。

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