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芸西天文台通信<2006年8月17日号>


72P/Denning-Fujikawaの再測定

少し古い彗星ですが、今回棚の奥に眠っていたプレートを発見し再測定しました。あるいは初めての測定もあるかもしれません。その名は今は幻となった「デニング・藤川彗星」です。
 1881年にイギリスのデニングによって眼視発見され、9年位の周期で回っていたはずですが、その間誰も発見せず、97年も経った1978年に偶然藤川氏が見つけました。ところが、その後3回ほど回ったはずですが、度々のチャンスに芸西でも60cmで捜索しましたが、結局空振りに終わりました。1978年10月、しし座に輝いていた同彗星のイメージはまだ私の眼底にはっきりと焼きついています。彗星は10等級で非常に拡散していますが、40cmコメット鏡による写真では核がはっきりしている日もあります。あの頃はすべて6x9のガラス乾板を使用していました。特に富士の低照度乾板FLO-Uが圧倒的に多かったようです。当時カタログはSAO星表を使っていましたので、当然今回が精度は良いはずです。当時の比較星3個に対して、今回は9個です。しかも彗星に近い微光星ばかりです。
72P/Denning-Fujikawa(1978 T2)                         
1978UT           α (2000.0)   δ          m1         
Oct.11.80729  10 23 18.34  +07 06 33.5     9.6     372
    29.76806  10 16 41.30  +17 39 24.8    13.6     372
    29.78993  10 16 41.53  +17 39 52.7    12.6     372
    31.80799  10 17 21.11  +18 20 58.1    12.5     372
Nov. 2.80069  10 18 04.38  +18 58 36.8    13.3     372
 今回使用する写真は40cmによるもので彗星が最も明るかった10月11日です。完全な球状で尾は全く見えていないようです。これは本当に100年に1回しか輝かなかった幻の彗星の姿だったのでしょうか。
 さて次回も不運の星「羽根田・カンポス彗星」です。

デニング・藤川彗星
1978年10月12日 4時19分から7分間露出
40cm F5反射鏡
FLO-Uプレート


芸西天文台通信2002年10月28日号参照
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