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2002年3月の日記

● 3月25日
 3月21日の C/2002 F1 観測失敗談の巻があって以来なかなか晴れません。一応『晴れ』の予報でも夜は花ぐもりと言うか冬型の冷たい風と暗雲が流れて星が見えないのです。したがって「宇都宮彗星」は芸西では未だ一度も捉えていません。
 3月21日の朝4時に起きた日、実は7時に家を出発して片道4時間の足摺岬に向かったのです。あるふしぎな海岸を見るのが目的です。場所は土佐清水市に近い『 臼碆(うすばえ)』と言う釣り人のみが知る海の秘境です。足摺岬の西の絶壁から小さな鳥居をくぐって歩いて降りると、そこに何と、ああ、この世のものか!と思わせる大岩礁と太平洋のパノラマが開けました。雨の中あまりのことにカメラがぬれるのも平気。ポケットからミノックスカメラを取り出して写真に収めました。こうした誰も知らない秘境の風景は小さなスパイカメラで撮るのが似合っていると思ったからです。
 まさに東奔西走と言うか、400Km以上を走り続けた一日でした。夜中は芸西行きを狙うも曇り。私はいつも動き回って活動しているほうが良い。
[不思議な海岸の写真]
          ミノックスLX フジカラー100
 海に向かって屹立する大岩の内側にも海水が入り込んで大きな池ができ海頭が立っている。

● 3月21日
 午前4時に目が覚めてしまいました。眠られぬまま2階の書斎に下りてみると、暗い冷たい空気の中FAXが届いていました。それは須賀川市の佐藤裕久さんが送ってくださったもので、九州の宇都宮さんの発見を伝えるIAUCでした。
 時刻は夜明けまで幾ばくもない4時5分。とにかく行かなくてはと、おっとり刀で出発。40km離れた天文台へ何分で着いたと思いますか?
 60cmの主鏡を目的の位置に向けたのは宜しかったのですが、余りにも慌てて日付けの計算を1日間違えてしまったのです!数枚の撮影にも写らず20cmの眼視でも見えず。帰宅してからそのミスが判明し、折角の貴重な時間が生かされず落胆。
 天候も悪化の傾向でもあり、今日は天文台行きを休みました。

● 3月15日
 高知市ではまだ桜は開いていませんが、このところずい分と暖かくなり朝夕の観測が楽になりました。しかし芸西は遠いので大変です。池谷・張彗星を見に夕刻天文台へ行くと、今度は暁まで待ってC/2002 E2を観測しなければなりませんから。その間8時間くらいは60cmと21cm(F3)でパトロールしています。勿論機械につきっきりです。いつぞやノートを忘れて往復80kmを取りに帰ったことがあります。
 今日は市営プールに行って1000米ほど泳ぎました。観測の原動力を養うためです。観測はテクニックも大切ですがそれを支えるのは体力です。
 さて、3月12日に新潟県の村上茂樹氏が独立発見した新彗星
C/2002 E2(Snyder-Mukarami)ですが、60cmですと核が実にシャープでコマは小さく、20cm40倍ですと核は見えず3.5′くらいのコマが大きく拡がって見えます。捜索風に流してみましたが楽につかまりました。今はどこでも空が明るいのでコメットーカーは比較的高い倍率が良い。例えば15cm反射で35倍というのはどうでしょうか。
 雨上がりの夜、これから天文台へ行きます。

● 3月8日
 芸西天文台にやってきて暮れなずむ夕空に『池谷・張彗星』を待つ間、まず目に止まったのはピンク色の夕空にポツンと白く光る水星でした(写真1)。60cm反射鏡に同架してある20cmR 40×でのぞくとやや赤っぽい円盤体に見えました。
 18時40分、20cmを彗星の位置に合わせると早くも白いバックの中に彗星がちらちらと見え始めました。明るさは4.8等くらいでコマは10'弱の様子。まだ肉眼で発見できる姿ではないようです。
 21cmF3のεで写しました(写真2)。ブルーのコマと尾が印象的です。
[夕空の水星]
(写真1) 夕空に光る水星


[池谷・張彗星の写真]
(写真2) 池谷・張彗星=C/2002 C1(Ikeya-Zhang)
(中央部をトリミングしています)

● 3月4日
 昼間、天文台のスタッフの1人岡村啓一郎さんと芸西村の天文台にやって来て作業をしました。駐車場から天文台への歩道の改修です。この日は実は天文台の一般公開の日になっていましたが、見学者が無く私はそのまま残って夕空の観測を行いました。低気圧が接近中で予報より半日早く現象が進むので心配していたのですが、やはり案の定日没直後から西に群雲が発生し、肝心の池谷・張(ジャン)彗星は僅かに30分足らず見ただけで曇ってしまいました。20cmR60Xで覗いたところ明るい7′くらいのコマでm1は5.0、尾は幽かです。1661年のホウキ星と同定が噂されているだけに張(ジャン)と明るく大きくなってくれたら良いのですが、どうも常識的には肉眼彗星とは言えません。
テレスコープが発明されて間も無い時代に、それとなく肉眼で気付く彗星というと、やはりコマがある程度大きくないと見えても恒星との区別がつきません。
そのようなことを考えると今回のC/2002 C1は少しスケールが小さい様に思えて心配しているのです。2ケ月以上アークが伸びて惑星の摂動を逆に伸していったらある程度判断がつくでしょう。
 この日、3つの精密位置を得て「芸西天文台通信」の頁にのせましたが写真ではコマの中心がはっきりせず±1″くらいか?計算に役立てて下さい。
佐藤さんの最新の軌道とのズレは1″くらいで、これで1661年の彗星に近い方向に修正されれば良いのですが・・・。次は金曜日にObs.



Copyright (C) 2002 Tsutomu Seki. (関勉)