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2000年1月の日記

● 1月27日
 今度は夕空に挑みました。南に低いC/1999 T1から始まって、4つに分裂したマックホルツ2彗星や、太陽に近づき始めたリニア彗星(C/1999 S4)なんか撮影しました。ドームの中は暖房はありませんから、夕方19時頃既に+3°。夜半後は氷点下になるでしょう。しかし、寒い日の空は美しい。大シリウスの下(南)にまるで小シリウスかと思われるカノープスの青白い巨光は南の芸西ならではの光景です。夜半に北を見ると、「おおっ、北斗七星だ!もう春も近いのだ。」と思いました。やはり寒くても冬が良い。天の川は大犬座の東にザラザラと銀の砂でした。
[昇る北斗七星]
昇る北斗七星
28mm F5.6
プレスト1600  20分露出
● 1月26日
 月光がありましたが夜半に天文台へやって来ました。月齢20日の明月が天心に光っていても冬の空は暗く見事。月から90°以上離れた天空で探索を行いました。気温はぐんと冷え込み、昨日の予想では氷点下2度。久しぶりに激寒の中で奮闘しました。オリオンが、大犬が美しいので、観測のしんどさも忘れ星空に陶酔します。
 写真は氷点下の中のドームで60cmを操作している私です。CCDと違って、暗い天体を、ガイド星を見ながら30分以上も追跡しているところです。
[60cm主鏡をガイドする筆者]

● 1月18日
 今度は高知市本町4丁目の自由民権会館の老人大学での学習です。集まった約100人の受講生の平均年齢が80歳と言いますから相当な高齢者達で、中には96歳という長老の方も居られました。天文学の一般的なお話、星座や惑星の見つけ方、才差による北極星の移動のこと、それに関連して3000年ほど昔、日本や中国の中緯度で南十字星が見えたお話。イケヤ・セキ彗星命名のエピソードや彗星発見の競争のことなんかポピュラーな内容でお話し、ここでは年長者の落ち着いたやさしい視線を集めました。人間は夢を見失わず生涯現役でなくてはならないことを強調し、お年寄りに希望を与えました。

● 1月17日
 寒かったり暖かかったりの新年です。1月は1年中で最も空の美しい、しかも晴天の多い日です。天文台から眺める夕暮れの景色も美しくシャープです。日が沈んで温床のビニールハウスの灯が点灯するまでの5時間がまずは稼ぎ時。後はハウスの灯の消える午前3時頃から明け方までの作業となります。仕事は過酷でも芸西には美しい景色と星空があるので救われているのです。
 7月に地球に近づくリニア彗星はまだ15等星です。
[芸西の夕暮れの景色]

● 1月16日
 2000年になって最初の講演は高知市の潮江東小学校の1日先生でした。
 小学校5年生とその父兄約150人でスバル望遠鏡の目的や宇宙の涯て、そして宇宙人の可能性なんか子供の喜びそうな星のお話を約1時間行いました。最近は授業に集中しない子が多くなって来たとの話を良く耳にしますが、話の内容に興味があれば結構注目してくれます。1時間あまりの間、子供達の鋭く熱い視線を一身に集めて熱弁しました。

● 1月7日
 今は冬たけなわですが暖かい日が多く時々春のような陽光を感じるときがあります。日の落ちる時、天文台にやってきて夕空を見ていると夕焼け雲の様子がさまざまに変化して面白い光景です。
 芸西は高知空港から関西方面に飛んでいく飛行機の航路になっていて、丁度ドームの真上をキラリと光ながら飛んでいきます。天文台での天体撮影に飛行機の光條が写っていてびっくりすることがあります。やや雲の多い日でしたが夜になって西空から晴れ始め、ドームの中では活動が始まりました。
 今年の7月に地球に接近してくるリニア彗星1999 S4はまだ15等星の小さな光芒でしか見えません。
[芸西天文台と夕陽]

● 1月3日
 良い天気が続きます。昼間は暑いくらいで部屋に居ると冷房をかけようかと思ったくらいです。天文台では今年の7月に接近してくるリニア彗星(C/1999 S4)や、昨年最後の発見となったC/1999 Y1なんかを撮影しました。オリオン星座の美しさにはいつも感動します。シリウスの巨光はまるで大犬が吠えている様。午前3時頃から四分儀座流星群を見ていましたが、極大の時刻がずれてきているのか多くの出現はありませんでした。午前5時、金星が出て東の空が俄に明るくなりました。芸西の夜半後の空は金星の光にさえも光害を生じるほど暗く敏感です。昨年オーストラリアで発見(双眼鏡で)され、明るかったリン彗星(1999N2)消滅?しながら北天を駈けています。多分コマは霧の如く分散したのでしょう。60cmF3.5の明るい主鏡にISO3200のNカラーフィルムを装填して10分間の霧光を行いました。分散したコマを色でキャッチしようという試みです。
 天文の多忙で忘れていました!
 『謹賀新年』

● 1月1日
 ついに2000年の新春がやってきました。コンピュータが誤動作するという問題は、ほとんどすべて解決されていると思うし。夜半前に天文台へ出かけようとすると、妻が、不安なので午前0時を待って行ってくれと言う。時計の針が刻々0時に近づいていくのを見つめていると、少年の頃見た探偵小説の映画で宝石のドロボーの犯人が犯行時刻を予告して机の上で家人らが見張っている宝石箱からまんまと略奪していくシーンを思い出し、久し振りのスリルを味わいました。柱時計の針が午前0時を5分まわったところで芸西にむかいました。(怪盗ルパンは来なかった!)
 天文台の丘から南の国道(約2km)を見ると、海岸線に沿って無数のヘッドライトが遥か室戸岬に向って延々と続いています。室戸岬で初日の出を拝むのです。正月は光害もなく、美しい星空を満喫して、私は天文台ですがすがしいご来光を拝みました。「天文学的に成果の多い年であります様に」と。



Copyright (C) 2000 Tsutomu Seki. (関勉)