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1999年10月の日記

● 10月30日
 東亜天文学会の年1回の総会と天体発見表彰式があって10月30日〜31日、富山市に行きました。
 総会の後、国立天文台台長 小平桂一氏の「すばる望遠鏡で見る宇宙」と題する講演(一般公開)があり、約2時間、その熱演に心を打たれました。200トンを超す巨大な望遠鏡をたわみによる光軸のひずみを0.1mmに押さえたり、また8m鏡面のひずみをミクロンの単位で正しく修正するための、正に世界の光学や電気、更に建造の最高の技術を総動員して作られたことを知り感動しました。巨額の費用を投じて完成しただけに今後の天文学的な成果に対する意気込みが感じられました。非常に高い光学性能から、今後他の恒星に存在すると思われる惑星の発見もスバルの重要な任務の1つとなりそうです。「皆さんは宇宙人がいると思いますか?」との台長の問いに対して多くの聴衆が手を挙げたのも最近の天文学の流れを反映しているように思われました。
 夜には富山天文台の見学会があり、近代的な1米鏡でアンドロメダのM31、M32や木星、土星を眺めました。ピントはいまひとつという感じがしましたが、村山定男氏は「シーイングは良好でしょう。」と話しておられました。今はどこへ行っても大口径ですね!!
[講演会の様子]
[富山天文台の見学会の様子]
● 10月27日
 秋らしい見事な快晴に恵まれました。予報では昨日来の豪雨がまだ日中は残るように言っていましたが、予報より実際の現象は半日以上早く進行するのです。そうしたこともチャンと心得て天体の観測の計画をたてるのです。夕方は見事な夕焼け。3階の屋上から見る西空は幻想的です。今は月が明るいのですが間もなく夕方の観測をはじめます。数年前に4つに分裂したマックホルツ2彗星が夕空に近づいてきています。果たして6〜7等になるのか?どんなイメージか楽しみにしています。
 10月30日〜31日は東亜天文学会(OAA)の富山の会に出席します。
● 10月11日
 今から38年前の同じ日、しし座に彗星(1961f)を発見した日です。β(ベータ)星の近くの発見位置が気になります。午前4時半を過ぎてもしし座のβ星はなかなか上がってきません。当時の高知市上町の自宅での条件がかなり良かったことがわかります。夏の名残か空が悪くて黄道光もろくに見えません。しかしコメットシーカーを握って今も同じ情熱を持ってホウキ星を探している自分自身の姿が尊く見えました。
 今年もスバルがやってきました!楽しいにつけ、苦しいにつけ掃天のかたわら常に仰いだスバル。美しいスバルに見つめられながらの作業は楽しいものです。そして、いつかまた会えるだろうコメットを求めて。

スバル(M45)
1999年10月11日 午前3時
16cm F3.3鏡にて15分 ISO 800
● 10月9日
 ジャコビニ流星群の日ですが、やはり目立った出現はありませんでした。他の観測で60cm反射鏡を操作しながら常に天窓を注意していたのですが。面白いことに午前3時頃、ペルセウス座の方向から明るい流星が1つ、見事な痕を残して流れました。色、速度、そして痕の状況から遅れ馳せの同群のものと思われました。
 流星の写真を写すことは昔の天文家たちの夢でした。なぜならフィルム(同時はガラス乾板を使用した)の感度は低く、今のISOにして16くらい。高いのでISO32がありました(戦前の話)。カメラも天体には組み立て式の暗箱カメラが主流で、レンズのF値も4.5〜5.6とかいった暗いものでした。こうした悪条件の中で広島県竹原の吉井耕一氏が多大の時間をかけて流星撮影に挑戦されました。下の写真は昭和10年頃の貴重な1枚で、3個のボックスカメラが見えています。吉井氏は最近小惑星に名前が付きました。80歳を越えてお元気です。

昭和10年頃 流星の撮影をする某氏
● 10月8日
 今年もしし座流星群の見える日が近づいてきています。昨年はあいにくの曇天で芸西の天文台もせっかく多くの見学者が集まりながら十分な成果をあげることができませんでした。大豊町の梶ヶ森天文台では海抜1400mの寒冷地ですから、今年も参加者にしし鍋をご馳走する由です。
 しかし一度は流星雨なるものを見てみたいものです。写真は1933年、ヨーロッパ各地で驚くべき大出現を見せたジャコビニ流星群で、スペインのバルセロナでは毎分1000個以上、3時間にわたって数万個の流星がありました。その時の本物の映像が入手できました!ヨーロッパの空に、打ち上げ花火の如く乱舞する流星雨の貴重な1枚です。
 今年の10月9日夜のジャコビニ流星群に注目してください。
● 10月5日
 昨夜からの連続です。第2の観測室(スライドルーフ)と掛け持ちで写真観測を続行しました。頭上にはすばるが光り、東南に高くなったオリオンは秋の色彩を放っています。ギラギラと激しく明滅するシリウスは早くも冬を呼んでいる様。
 午前4時から12cmの双眼鏡で東天の捜索です。月はしし座にあって視野の中にものすごい立体感をもって入ってきます。
 1940年10月に岡林氏が発見したのは、しし座の大鎌の中でした。1956年10月6日にクロムメリン彗星を捕らえたのは大鎌の少し北でした。そして1961年10月11日にセキ彗星を発見したのはしし座のベータ星の近くでした。そのベータ星が東の山並みにくっつくようにして見えてきました。4時45分終了。三日月状の月とまったく同じ形をした金星とが上下に並んでとても可愛く見えました。

● 10月4日
 やっと9月来の長雨から脱出しました。10月4日の天気予報はくもりのち雨となっていましたが昼間は僅かに薄雲が出たものの、空は秋の色。夜に入ると見事な星月夜となりました。気象台では予報が外れるとショックでしょうが、良い方に外れるのは天文台としても大歓迎。”関予報官”は人工衛生からの雲の様子を見て”晴れ”と踏んでいたのです。だって西日本周辺には雨を降らす様な雲はありません。
 午後10時30分に芸西へ出発し、夜半まで60cmで小惑星のパトロール。幸いシーイングが良いので、11年振りに再発見されたP/1988V1(19等)も狙いました。そして来年の7月(満月のころ)地球に近づくC/1999S4(Linear)も写しました。まだ直径が15"ほどの17等星です。夜空の明かりも少なく、秋らしい星空となってきました!

● 10月2日
 ようやく好天が続くようになりました。毎年9月から10月はクロイツ属の彗星の出現する頃ですが、今年もどうやら大きいものは出なかったようです。そのかわり巨大なホウキ星の写真が届きました。高松市で印刷業を営んでいる穴吹勝彦さんがイケヤ・セキ彗星の縦160cm、横120cmもある印刷写真を持ってきてくれました。早速ギタースタジオに掛けると、丁度1965年の秋、山でレイ明の空にホウキ星を見上げた感じピッタリです。改めて34年昔の感動とてんやわんやの大騒ぎを思い出しました。また、いつの日にか現れるであろう”クロイツ組”の大彗星に期待したいものです。 

[ギタースタジオに掛けた写真と私]



Copyright (C) 1999 Tsutomu Seki. (関勉)