__________________________________________________________
国立天文台 メールニュース No.241 (2022年11月29日発行)
__________________________________________________________
国立天文台の研究成果やイベント、注目したい天文現象などを、メールでお届けする
不定期発行のニュースです。どなたでも無料でニュースを受け取ることができます。
◇もくじ-------------------
・話題:『星学手簡』が国の重要文化財に指定
・お知らせ:理科年表 2023 刊行
・天文現象:12月中旬、ふたご座流星群が活発に
-------------------------◇
▼話題
____________________________
■『星学手簡』が国の重要文化財に指定
国立天文台が所蔵する『星学手簡(せいがくしゅかん)』を国の重要文化財に指定
することが、2022年11月18日の文化庁・文化審議会にて文部科学大臣あてに答申され
ました。国立天文台は、江戸幕府天文方が所蔵していたものを中心に、天文・暦・和
算関係の古書を多数所蔵しており、『星学手簡』はその一つです。
『星学手簡』は、高橋至時(たかはし よしとき)と間重富(はざま しげとみ)の
間で交わされた書状を中心に集成された、上中下の3巻から成る書物です。編者は至時
の次男である渋川景佑(しぶかわ かげすけ)とされています。
幕府天文方となった至時は改暦の任を命じられ、重富の協力を得ながら、全国各地
で天測、測地といった準備を行い、やがて最新の理論と精度の高い観測に基づいた
「寛政暦」を完成させました。この間に、二人の間で頻繁に交わされた書状をまとめ
た『星学手簡』は、江戸時代後期の天体観測や天文暦学研究の実態、観測・測量機器
の考案および改良、寛政の改暦や、至時に弟子入りした伊能忠敬(いのう ただたか)
の全国測量の実情等を詳細に伝えています。
『星学手簡』はマイクロフィルムに記録し保管されています。このマイクロフィル
ムから起こした画像は、国立天文台図書室のウェブサイトで公開されています。
▽『星学手簡』が国の重要文化財に指定
https://www.nao.ac.jp/news/topics/2022/20221118-seigaku.html
▼お知らせ
____________________________
■理科年表 2023 刊行
『理科年表』(国立天文台編)は、暦、天文、気象、物理/化学、地学、生物、環
境の7部門から成る科学全般を網羅したデータブックです。その2023年版が刊行され
ました。
暦部トピックスでは、ユリウス日について解説しています。
天文部では、膨大な観測データで天文学に新たな革命をもたらしつつあるGaia(ガイ
ア)衛星の成果を「近距離の恒星」に反映し、トピックスにて解説しています。さらに、
「超新星」には電子捕獲型とされる「超新星2018zd」を追加し、同じくトピックスで解
説しています。
気象部や物理/化学部でも、最新の観測や知見に基づきデータを追加・更新していま
す。地学部では、「地質年代表」に2020年認定の「チバニアン期」を、「日本付近のお
もな被害地震年代表」に1454年の「享徳(きょうとく)の津波」を追加するなど、さま
ざまなデータを更新しました。生物部では、「体が分岐する環形動物キングギドラシリ
スの発見」で新たな環形動物の発見を、環境部では、「未知なる感染症とワクチン開発
」でCOVID-19の事例を中心にワクチン開発について、解説しています。
理科年表は多数の研究機関の協力の下に国立天文台が編さんする、日本で最も信頼さ
れている「自然界の辞典」です。大正14(1925)年に創刊されましたが、第2次世界大
戦中に休刊していた時期があり、今号が第96冊となります。創刊号から最新号までのデ
ータを集録した『理科年表プレミアム 個人版』もぜひご利用ください。
理科年表オフィシャルサイトを、このたび全面リニューアルしました。「徹底解説
」
や「理科年表Q&A」、これまでのトピックスやその後日談を紹介する「りかトピ」のほ
か、理科年表紙面を補う「プラスα」も新たに追加しています。こちらもぜひご活用く
ださい。
▽理科年表オフィシャルサイト
https://official.rikanenpyo.jp/
▼天文現象
____________________________
■12月中旬、ふたご座流星群が活発に
毎年12月中旬には、三大流星群の一つである「ふたご座流星群」が活発に活動し、ふ
だんよりも多くの流星が見られます。
今年は12月14日22時頃に、ふたご座流星群が極大を迎えると予想されています。12月
13日の夜から14日の明け方にかけてと、14日の夜から15日の明け方の2夜は、とくに多く
の流星が見られそうです。ただ、両夜ともに夜遅くなると下弦前の月が昇ってくるため、
観察の際に月明かりの影響を受けてしまいます。月の出の前、夜半前の観察がお勧めです。
流星はふたご座の方向にだけ現れるのではなく、空全体に現れます。そのため、なる
べく空を広く見渡すようにして観察しましょう。とくに、月明かりが視野に入らないよ
うに注意するとよいでしょう。
今年のふたご座流星群については、国立天文台ウェブサイトの「ほしぞら情報」を、
流星群についての詳しい解説は、基礎知識の「流星群」をご覧ください。
▽ふたご座流星群が極大(2022年12月)
https://www.nao.ac.jp/astro/sky/2022/12-topics04.html
▽流星群
https://www.nao.ac.jp/astro/basic/meteor-shower.html
◇編集後記-----------------
『星学手簡』が国の重要文化財に指定される運びとなりました。公開されているマイクロ
フィルムの画像を見ていると、「テレスコツフ」(望遠鏡)や「オクタント」(八分儀)
など観測に用いたであろう道具の絵や、月食の観測や、北極星の高度測定の記録などに目
がとまり、興味を引かれます(くずし字はほとんど分かりませんが)。
-------------------------◇
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
__________________________________________________________
発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室
発行日:2022年11月29日