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佐藤裕久
投稿日時: 2021-12-28 12:50
モデレータ
登録日: 2005-6-12
居住地: 日本
投稿: 2567
オンライン
国立天文台 メールニュース No.234

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 国立天文台 メールニュース No.234 (2021年12月28日発行)
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国立天文台の研究成果やイベント、注目したい天文現象などを、メールでお届けする不定期発行
のニュースです。どなたでも無料でニュースを受け取ることができます。

◇もくじ-------------------
・研究成果:若い頃の太陽が惑星に与えた影響は?
・研究成果:宇宙空間を漂う多数の浮遊惑星を発見
・天文現象:好条件のしぶんぎ座流星群
・お知らせ:2022年の初日の出
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▼研究成果
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■若い頃の太陽が惑星に与えた影響は?

 京都大学岡山天文台のせいめい望遠鏡をはじめとする複数の望遠鏡が、「りゅう座EK星」の長
時間の監視観測を行い、この恒星が噴出する巨大フィラメントを捉えることに成功しました。
りゅう座EK星は年齢が1億年程度の若い恒星で、表面温度が太陽とほぼ同じ「太陽型星」であり、
若い頃の太陽の姿を知るためのよい研究対象です。
 太陽や太陽型星の表面では、しばしば爆発現象「太陽フレア」が発生し、それに伴ってフィラ
メント噴出のような質量放出現象を起こしますが、大規模なものは、その恒星を周回する惑星の
環境に影響を及ぼすことが知られています。
 今回の観測では、りゅう座EK星で発生した大規模なフレア(スーパーフレア)の可視光線での
分光に初めて成功し、温度が約1万度に達する巨大なフィラメントが噴出していたことを明らかに
しました。これは、太陽でこれまでに観測された最大級の質量放出の10倍以上にあたる大規模な
現象だったことも分かりました。このことから、若い頃の太陽でもこのような大規模な質量放出
現象が起こっていたと考えられるのです。
 若い頃の太陽は、地球を含む惑星の環境に対してどのような影響を及ぼし、惑星における生命
の生存環境や生命の維持に対して、どのような役割を果たしていたのでしょうか。また、現在の
太陽でスーパーフレアが発生した場合、地球環境や人類にはどのような影響があるのでしょうか。
 今後も太陽型星の研究を続けることで、このような課題について具体的に議論できるようにな
ることが期待されます。
(2021年12月10日発表)

▽太陽型星のスーパーフレアから噴出する巨大フィラメントを初検出―昔の、そして今の惑星環
境や文明に与える脅威―
 https://www.nao.ac.jp/news/science/2021/20211210-okayama.html
 http://okayama.mtk.nao.ac.jp/EK_Dra/EK_Dra_superflare.html


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■宇宙空間を漂う多数の浮遊惑星を発見

 すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ(HSC)などを用いた観測データから、宇宙空間を漂う惑
星質量の天体「浮遊惑星」が多数発見されました。浮遊惑星は、惑星程度の質量がありながらも、
恒星を周回することなく宇宙空間を漂っている天体のことで、2000年頃からその存在が明らかに
なっていました。
 この研究に用いられたのは、さそり座からへびつかい座にかけて広がる星形成領域を、過去20年
間にわたって観測した画像約8万枚です。これらを集約して、2600万個の天体の位置、明るさ、動
きのデータをまとめ、さらに位置天文衛星で得たデータも組み合わせて、およそ100個もの暗い天
体を検出することに成功しました。この暗い天体は近くに恒星が存在しない浮遊惑星と考えられ、
一つの星形成領域で捉えた数としてはこれまでに最も多いものとなりました。
 この領域には、なぜこれほど多くの浮遊惑星が存在しているのでしょうか。理論モデルを当ては
めると、星間ガスが自らの重力で収縮して生まれた天体と考えるには、数が多すぎます。これらの
浮遊惑星は通常の太陽系外惑星と同様に恒星の周りで作られた後、それぞれの惑星系から外に放出
されたと考えられます。
 大型赤外線宇宙望遠鏡などにとっては、近くに明るい恒星がなく、低温で微弱な明るさの浮遊惑
星はたいへん適した観測対象となります。今回発見された浮遊惑星は、その大気の研究や通常の太
陽系外惑星との比較研究を行う上で、重要なサンプルとなることが期待されます。
(2021年12月23日発表)

▽星のゆりかごを撮影した画像から多数の浮遊惑星を発見
 https://www.nao.ac.jp/news/science/2021/20211223-subaru.html
 https://subarutelescope.org/jp/results/2021/12/22/3013.html


▼天文現象
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■好条件のしぶんぎ座流星群

 「しぶんぎ座流星群」が、1月4日の早朝に出現の極大を迎えます。
 しぶんぎ座流星群は、同じく三大流星群とされる「ペルセウス座流星群」や「ふたご座流星群」
に比べると、流星が多く出現する期間が短く、また年によって出現数の変化が大きいことから、多
くの流星が見られる年が限られることが知られています。しかし今回は、極大となる時間帯に流星
群の放射点の高度が高くなること、月明かりの影響がないことから、日本では近年まれに見る好条
件で観察できそうです。
 しぶんぎ座流星群の流星が見え始めるのは、北東の空から放射点が昇った後の1月4日午前1時頃
(3日の深夜)です。今回のしぶんぎ座流星群の極大は4日午前5時から6時頃と予想されていますか
ら、放射点が高く昇る夜明け前の午前5時台に最も多くの流星が見られるでしょう。空が十分に暗
い場所では、多ければ1時間あたりおよそ50個以上の流星を観測できる可能性があります。ただ、
前述のとおり出現数の変化が大きいため、見られる数がもっと少ない可能性もあります。
 流星は空全体に現れますので、できるだけ空を広く見渡すようにして観察しましょう。
 今回のしぶんぎ座流星群についての詳しい情報は、国立天文台ウェブサイトの「ほしぞら情報」
を、流星群についての詳しい解説は、基礎知識の「流星群」をご覧ください。

▽しぶんぎ座流星群が極大(2022年1月)
 https://www.nao.ac.jp/astro/sky/2022/01-topics02.html
▽流星群
 https://www.nao.ac.jp/astro/basic/meteor-shower.html


▼お知らせ
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■2022年の初日の出

 新しい年を迎えるにあたり、各地の初日の出の情報を国立天文台ウェブサイトに掲載しています。
都道府県庁所在地のほか、富士山頂や犬吠埼といったお問い合わせが多い場所について、初日の出
の時刻や方位角等を公開しています。
 また、暦計算室の「2022年 初日の出情報」では、市町村名等から初日の出の時刻と方位角を計算
することができます。どうぞご利用ください。

▽初日の出情報(2022年)
 https://www.nao.ac.jp/astro/sky/2022/01-topics01.html
▽国立天文台 天文情報センター 暦計算室
 2022年 初日の出情報
 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/


◇編集後記-----------------
日本海側は大雪に見舞われ、太平洋側は乾燥した空気と晴天。典型的な真冬の天候の年末を迎えて
います。とくに雪が多い地域の方は気象情報から目が離せない日々ですが、晴れが期待できそうな
ら、初日の出、しぶんぎ座流星群にも関心をお寄せください。来る2022年が穏やかで平和な年とな
りますように。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室
発行日:2021年12月28日

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