VSOLJニュース(390)
板垣さんがいて座に新星を発見
著者:前原裕之(国立天文台)
連絡先:hiroyuki.maehara@nao.ac.jp
1月26日にいて座の中に新星が発見されたのに続いて、29日にも同じいて座の二つ目
の新星が発見されました。この新星を最初に発見したのは山形県の板垣公一(いたがき
こういち)さんで、オーストラリアのAndrew Pearceさんも同じ日にこの新星を独立に
発見しました。板垣さんは1月29.882日(世界時; 以下同様)、Pearceさんは29.846日に
撮影した画像から、それぞれ独立にいて座の中に10.5-10.6等の新天体を発見しました。
発見報告を受けて行なわれた観測によると、この天体の精密な位置は
赤経: 17時 59分 04.25秒
赤緯: -36度 01 分 07.1秒 (2000.0年分点)
です。
この天体の分光観測は、1月31日にチリにある口径4.1m SOAR望遠鏡を用いて行なわれ、
この天体のスペクトルにはP Cygプロファイルをもつ水素のバルマー系列や一階電離し
た鉄、中性酸素の輝線がみられ、バルマー線ではP Cygプロファイルの吸収線は輝線に
対して速度に換算して秒速1500 kmほど青方偏移していることが分かりました。このよ
うなスペクトルの特徴から、この天体も古典新星であることが確認されました。
A. Pearceさんは、発見よりも3日前の1月26.842日に撮影された画像に、この新星が
11.1等で写っていたことを報告しており、実際の増光開始は発見よりも3日以上前だっ
たと考えられます。また、この新星は2月1-2日には10.2等ほどで観測され、発見時よ
りもわずかに明るくなったようです。今後の明るさの変化が注目されます。
この新星にはいて座V7992という変光星名がつきましたので、観測報告をする時は
この名称をお使い下さい。
2025年 2月 5日
新星の画像
・板垣さん撮影(発見画像)
http://www.k-itagaki.jp/images/sgr-25-01-29.jpg
参考文献
CBET 5499: V7992 SAGITTARII = NOVA SAGITTARII 2025 No. 2
Aydi, E., et al., 2025, ATel #17012