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芸西天文台通信<2000年8月2日号>


● C/1999 S4(LINEAR) リニア彗星の崩壊
 連日の雨です。8月1日は夕刻南天にわずかな青空が覗いたので、百分の一の奇跡を信じて天文台に走りました。はたしてリニア彗星は7月26日の近日点通過後どうなったのだろう?60cm鏡を西に低い雲の中の彗星の位置に正しく向け晴れ間がやってくるのをじっと待ちました。薄明がそろそろ終わろうとする20時20分、同架せる20cm屈折の中に一瞬恒星が映り出し、視野1°の中央に輝くリニア彗星を私は見ました!それはまるで霧の如くモーローとかすむ巨大なコマで、尾がスーッと30'ほど伸びている様子がわかります。しかし極めて淡く中心核も光の強い従来のコマらしいイメージは全くありません。まるで彗星の残骸です。光度の判定は難しいが全体では案外と明るい7等星で、コマらしい物の視直径は10'か。20時35分に再び訪れたわずかな雲間(実際は薄雨の中)に60cm鏡で3分間の露出を行いました。こんな拡散したイメージは眼視で見えてもF値の暗い大反射鏡では写りにくく、結果が心配されました。

 下の写真はTM400フィルムでD-19現像(ハイコントラスト現像液)したものですが、画像でわかるでしょうか?
 1965年のイケヤ・セキ彗星が10月21日に近日点を通って同じように分裂崩壊しました。コマは風船のように拡大して核は無く、堂平の15cmファインダーには見えているのに91cm鏡(F5)では写らなかったという話を思い起こしました。そして1966年1月、南方で写された最後の写真(35mmカメラ)が今回の崩壊したリニア彗星の写真そっくりであることを思い出しました。この写真は今は幻の本となった『イケヤ・セキ彗星写真特集』(誠文堂新光社)の本に出ています。

 さて、もう1回チャンスがあればカラー(コニカ3200)で狙ってみたい。あと数日のチャンスです。しかし今日も豪雨が続いています。

[崩壊したリニア彗星の写真]
C/1999 S4(LINEAR)
2000年8月1日 3分露出
フィルム:TM400、D-19現像(ハイコントラスト現像液)
芸西天文台 60cm反射鏡




Copyright (C) 2000 Tsutomu Seki. (関勉)