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連載 関勉の星空ノンフィクション劇場

− ホウキ星と50年 −

はじめに

 1940年代のパロマー山天文台の完成から21世紀の幕開けを前に活動を始めた「すばる望遠鏡」までの約半世紀に天文学は多大の発展をとげました。巨大望遠鏡は幽遠な銀河の涯て(きしはて)に最新の宇宙像をつかまえんとし、また人類はロケットに乗って月面の探索や、無人ロケットによる火星の探検も実現し、もはや、宇宙旅行は夢ではなくなりました。このような天文学の歴史的な大発見過程において時代を同じくし、天文の研究を行うことのできた私は大変幸せだと思っています。思えば幼少の頃から星を見つめて半世紀がたってしまったわけです。その間にいろんなできごとがありました。恩師との出逢いや別れ、戦中に南海に散って行った先輩や友人のこと。私を天文学に導いてくれた1冊の本。そして発見のドラマ。永遠に去り行くわがホーキ星との訣別。母の亡くなった日、偶然に発見した小惑星の追跡、そして命名。こうした永い間の天文研究を支えたのは先輩の援助や友人のアドバイスもさることながら、やはり自分自身の心の底に燃えたぎる星空への情熱だったような気がします。遠くにキラキラ光る目標をいつまでも見つめ夢を追い続けることこそ、人間の最大の生きがいであり、喜びであることを知りました。アマチュア天文家である私には定年はありません。生きている限り現役として、若い頃と同じ情熱で夢を追い続けます。この連載は天文学を追求した一人の人間の宇宙で得た人生観でもあると解して下さい。

 さて、前置きはこのくらいにして、さっそく、天文台での怪事件から始めましょう。「人間が宇宙旅行する時代に幽霊や亡霊なぞあり得ない」とおっしゃるのでしょうか?たしかに私も同感です。しかし世の中にはいまだ科学の力では解明することのできない不可解なできごとがあるようです。私の体験したそれらのいくつかをここに紹介しながらみなさんと共に考え、そして宇宙を探検していきましょう。

 いよいよ連載のはじまりです!第1幕は<芸西天文台の怪>です。



Copyright (C) 2000 Tsutomu Seki. (関勉)