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佐藤裕久
投稿日時: 2018-1-9 11:03
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国立天文台 メールニュース No.183

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   国立天文台 メールニュース No.183  (2018年1月9日発行)
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■重力波天体が放つ光を初めて観測―重元素誕生の現場を捉えた
■国立天文台講演会/第23回アルマ望遠鏡講演会
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■重力波天体が放つ光を初めて観測―重元素誕生の現場を捉えた

 2017年8月17日、米国のLIGO (注1) と欧州のVirgo (注2) とで作る重力波観
測実験「LIGO-Virgo共同実験」は、これまで観測したものとは異なるタイプの
重力波信号を検出しました。これは、中性子星の合体に起因する重力波を捉え
た初めての例であることが分かり、世界中の科学者の注目を集めました。同時
に、世界中の望遠鏡がこの重力波源に向けられ、そのいくつかが重力波源から
放出される電磁波の観測に初めて成功しました。

 2015年9月、米国の重力波観測施設LIGOは、人類史上初となる重力波の直接
検出に成功しました。検出された重力波は連星系を成す2つのブラックホール
が合体した際に発生したもので、この重力波源は「GW150914」と命名されまし
た。アインシュタインの一般相対性理論により重力波の存在が予言されてから
100年。ようやく重力波の直接検出が達成されました。
 以降もLIGOによるブラックホール合体に伴う重力波の検出は続き、2017年
8月14日に検出された「GW170814」からの重力波は、LIGO-Virgo共同実験によ
る初めての同時検出となりました。

 2017年8月17日、LIGO-Virgo共同実験はこの時点で5例目となる「GW170817」
からの重力波を捉えました。これまで観測された重力波がブラックホール同士
の合体と推定されたのに対し、今回の信号は2つの中性子星 (中性子星連星) 
が接近・合体して発生した重力波と推定されたのです。
 ブラックホール同士の合体では重力波そのものの情報しか得られません。
しかし、中性子星同士の合体時には、「キロノバ」という電磁波放射現象が起
こり、重力波発生後の残光として可視光線、赤外線などが放射されることが理
論的に予想されていました。実際、重力波検出直後には、フェルミ・ガンマ線
宇宙望遠鏡が重力波源領域からやってくるガンマ線の信号を捉えたのです。
 中性子星合体後に放出される電磁波を捉えようと、世界中の望遠鏡が一斉に
この重力波源の方向に向けられました。日本の重力波追跡観測チームJ-GEM 
(注3) は、日本国内にある望遠鏡だけでなく、ハワイのすばる望遠鏡、南アフ
リカのIRSF望遠鏡、ニュージーランドのMOA-II望遠鏡など、国内外の望遠鏡群
を駆使し、可視光線・赤外線域での追跡観測を行いました。また、国際宇宙ス
テーションに搭載している装置を用いて、X線とガンマ線での観測も行いまし
た。その結果、重力波源に対応する天体を可視光線と近赤外線で捉えることに
成功しました。対応天体はうみへび座方向の銀河 NGC 4993 にあり、地球から
の距離は約1億3000万光年と特定されました。さらに、その天体の明るさの時
間変化を15日間にわたって追跡することに成功したのです。

 観測された明るさの変化は、国立天文台のスーパーコンピュータ「アテルイ」
を用いて行ったキロノバの理論計算とよく一致していました。今回の中性子星
合体では中性子捕獲反応「rプロセス」 (注4) が起こり、金やプラチナ、レア
アースといった鉄よりも重い元素が合成されたと考えられます。以前は、この
ような重元素は超新星爆発で生成されると考えられていました。しかし、超新
星爆発の理解が進むにつれ、通常の超新星爆発ではrプロセスによる重元素生
成は起こりにくいことが分かり、重元素がどこでどのように作られるのか、
詳細は明らかになっていませんでした。
 今回、中性子星合体で起こるrプロセスが観測的に捉えられたことは、宇宙
の重元素の起源に迫る大きな成果です。重力波観測と電磁波観測、さらに理論
シミュレーションの協調によって、新しいスタイルの天文学が生み出されたと
言えるでしょう。

 注1:Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatory の略称。
   米国のルイジアナ州リビングストン、ワシントン州ハンフォードの2カ
   所に、レーザー型干渉計重力波観測施設を置き、重力波検出のための
   実験と観測を行っている。米国国立科学財団 (NSF) による出資、カリ
   フォルニア工科大学 (Caltech)、マサチューセッツ工科大学 (MIT) 
   などで運営されている
 注2:フランス国立科学研究センター (CNRS)、イタリア国立核物理研究所 
   (INFN) など、欧州の20の研究グループから成る重力波観測所が設置す
   る、イタリアのピサ近郊の重力波検出器
 注3:Japanese collaboration of Gravitational wave Electro-Magnetic 
   follow-up の略称。重力波源の電磁波での追跡観測を行う日本の
   チーム。国立天文台のほか、東京大学、広島大学、名古屋大学、鹿児島
   大学など多くの大学・研究所が関わっている
 注4:鉄などの原子核に中性子が捕獲されて、より重い原子核が形成される
   反応を中性子捕獲反応と呼ぶ。中性子捕獲には、反応がゆっくり進む
   「sプロセス」と速く進む「rプロセス」があり、前者は主に年老いた恒
   星の内部で進みバリウムや鉛などの元素を、後者は金やプラチナなどの
   元素を合成することが分かっている

 ▽重力波天体が放つ光を初観測
  ―日本の望遠鏡群が捉えた重元素の誕生の現場―
  https://www.subarutelescope.org/Pressrelease/2017/10/16/j_index.html

 ▽重力波源からの光のメッセージを読み解く
  ―重元素の誕生現場,中性子星合体― 
  http://www.cfca.nao.ac.jp/pr/20171016

 ▽連星中性子星合体からの重力波が初検出されました
  http://gwpo.nao.ac.jp/news/000085.html

 ▽重力波天体が放つ光を初観測:日本の望遠鏡群が捉えた重元素の誕生の現場
  ―重力波を追いかけた天文学者たちは宝物を見つけた―
  https://www.nao.ac.jp/news/science/2017/20171016-j-gem.html


■国立天文台講演会/第23回アルマ望遠鏡講演会
 「冷たい宇宙に挑むアルマ望遠鏡
 ―惑星誕生のミステリーに究極技術で迫る―」

 国立天文台は、アルマ望遠鏡の研究成果を紹介する講演会を、来る2018年
2月4日に開催いたします。
 南米のチリに建設されたアルマ望遠鏡は、光を出さない冷たい星間雲の中で
恒星や惑星ができつつあるようすを鮮明に描き出してきました。なかには天文
学者を驚かせるような成果も数多くあり、惑星誕生の研究は今まさに大きく進
展しています。今回の講演会では、国際協力で実現したアルマ望遠鏡の全貌と
その開発に参加した日本の技術者たちの奮闘、アルマ望遠鏡を支える驚異的な
技術、そして惑星誕生の謎に迫る研究の最前線をご紹介します。

 開催概要
 テーマ:冷たい宇宙に挑むアルマ望遠鏡
     ―惑星誕生のミステリーに究極技術で迫る―
 日時:2018年2月4日 (日) 13:00-16:20 (開場 12:00)
 会場:東京国際交流館 (プラザ平成)  国際交流会議場
     (東京都江東区青海2-2-1 国際研究交流大学村内)
    http://www.jasso.go.jp/ryugaku/kyoten/tiec/index.html
 主催:自然科学研究機構 国立天文台
 参加費:無料
 参加方法:
  事前のお申し込みが必要です (定員400名、先着順)
  参加お申し込み開始は 1月10日 (水) 正午を予定しています
 内容:
  講演1:アルマは一日にしてならず
   長谷川哲夫 (自然科学研究機構 国立天文台 チリ観測所 上席教授)
  講演2:「アルマ望遠鏡」<ものつくり>の熱き奮戦
   山根一眞 (ノンフィクション作家)
  講演3:アルマ望遠鏡が見た惑星形成の現場
   武藤恭之 (工学院大学 教育推進機構 基礎・教養教育部門 准教授)
 その他:当日は講演のインターネットライブ配信を予定しています

 講演内容の詳細と参加お申し込み方法はウェブサイトをご覧ください。
 多くの皆様のご参加をお待ちしております。

 ▽国立天文台講演会/第23回アルマ望遠鏡講演会
  https://www.nao.ac.jp/news/notice/2017/20171228-alma-lecture.html


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発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室
発行日:2018年1月9日

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 » 国立天文台 メールニュース No.183 佐藤裕久 2018-1-9 11:03

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