VSOLJニュース(379)
反復新星のさそり座Uが12年ぶりに新星爆発
著者:前原裕之(国立天文台)
連絡先:hiroyuki.maehara@nao.ac.jp
さそり座Uは1863年5月20日にN. R. Pogsonによってさそり座に出現した9.1等
の新星として発見されました。Pogsonの観測によるとこの新星は発見後急速に
減光し、5月28日には12.4等まで暗くなり6月に入ると13.3等より暗く見えなく
なりました。Pogsonの発見から80年近くが経った1940年に、ハーバード天文台
の写真乾板の調査から、この新星が1906年5月と1936年6-7月にもそれぞれ8.8
等まで明るくなっていたことがH. L. Thomasによって発見され、さそり座Uが
繰り返し新星爆発を起こす「反復新星(※1)」であることが明らかになりまし
た。このような天体は我々の銀河系内では10個程度が知られており、昨年8月
にはへびつかい座RSが15年ぶりの新星爆発を起こしたことが記憶に新しいとこ
ろです(vsolj-news 378)。
これまでの観測や研究から、さそり座Uは1863年の発見以来、1906年、1917年、
1936年、1945年、1969年、1979年、1987年、1999年、2010年に新星爆発が確認
されており、我々の銀河系内に発見されている反復新星の中では最も短い間隔
で新星爆発を起こす天体として知られています。新星爆発が起きてから次の爆
発までの間隔はおよそ10年であることから、次の新星爆発の早期発見を狙って
数年前から密な監視が行なわれていました。
今回の新星爆発は長崎県の森山雅行さんによって日本時間の6月7日未明に発見
発見されました。森山さんは6月6.566日(世界時; 以下同様)にこの天体を観測
しましたが、この時は17.3等以下でまだ明るくなっていませんでした。とろこ
が、1回目の観測からわずか3時間40分後の6月6.720日の観測でこの天体が11.4
等に明るくなっていることを発見しました。長崎県の前田さんが6.575日に行っ
た観測でも16等以下だったことから、発見前の3時間半ほどの間に新星爆発を起
こし数百倍も明るくなったものと思われます。森山さんの発見報告を受けて行
なわれた観測では、6.773日に9.2等、6.886日に8.7等、7.008日に8.2等と急速
に明るくなっていく様子が観測され、日本時間の7日昼には8等ほどまで明るく
なりました。その後は前回2010年や前々回1999年の増光時と同様に減光を始め、
日本時間の7日夜には8.5等、8日夜には9.5等ほどまで急速に暗くなったことが
観測されました。小口径の望遠鏡で眼視的に見ることができるのは今週いっぱ
いくらいと思われます。今後の明るさの変化などが注目されます。
2022年 6月 9日
参考文献
vsnet-alert 26798, 26799, 26802, 26803
CBET 5129
※1:"recurrent nova"の日本語訳で、「回帰新星」、「再発新星」などと呼ば
れることもあります。