VSOLJ ニュース (202)
山形市の板垣さん、近傍銀河に超新星を発見
著者 :島田雅史、山岡均(九大理)
連絡先:yamaoka@rc.kyushu-u.ac.jp
冬の到来を告げる立冬も過ぎ、夜の長い季節になりました。夜長を活用して
長時間の天体観測が可能ですが、悪天候に悩まされる地域もあることでしょう。
超新星ハンターとして知られる板垣公一(いたがきこういち)さんがお住いの山
形は、冬は雪雲に覆われてしまうところで、冬の観測は困難です。冬本番を前
にした今月、板垣さんは超新星2008gzを発見されました。この発見によって板
垣さんの超新星発見数(独立発見を含む)は通算41個となり、その活躍ぶりはと
どまるところを知りません。
板垣さんは、11月5.831日(世界時、以下同様)に60cm反射望遠鏡を用いて撮
影した画像から、16.2等の新しい天体を見つけました。新天体の位置は、
赤経: 11時25分 3.24秒
赤緯:- 9度47分51.0秒 (2000年分点)
で、コップ座の渦巻銀河NGC 3672の中心核から南に7秒角、東に13秒角ほどの
ところにあたります。オーストラリアのパース天文台で行なわれている超新星
捜索プログラムでも、この超新星を独立に発見しています(7.841日、15.5等)。
母銀河までの距離は7300万光年ほどで、この距離に出現した超新星としては
発見時の明るさは暗いのですが、この方向はつい最近まで太陽に近くて観測を
行なえなかったため、爆発から間もない超新星なのか、それとも時間が経って
暗くなったものなのかはわかっていません(板垣さんの観測とパース天文台で
の観測とでは観測波長や比較星が異なるので、報告された明るさを単純に比べ
ることはできません)。この銀河には昨年、超新星2007bmが発見されています。
星間吸収のために暗くなっていましたが、それでもこの超新星は14等ほどに達
しました。今回の超新星についても、今後のスペクトル観測や光度変化の追跡
から、詳しい情報を得られることが待たれます。
参考文献:CBET 1566 (2008 Nov 10)
2008年11月10日