VSOLJ ニュース (190)
山形の板垣さん、明るくなる途中の超新星を発見
著者 :島田雅史・山岡均(九大理)
連絡先:yamaoka@rc.kyushu-u.ac.jp
年明けから続く、日本人アマチュア天文家による新天体の発見はまだまだ終
わりそうにありません。今回、エリダヌス座の銀河NGC 1200に出現した超新星
を発見された山形市の板垣公一(いたがきこういち)さんは、今月初めにも超新
星2008Bを発見したばかりです。
板垣さんは、自宅のある山形市と栃木県高根沢町にそれぞれ望遠鏡を設置し
ており、天候によって使い分けながら新天体の捜索を続けています。今の季節、
雪の多い山形市では観測が困難なため、高根沢町での観測がメインとなります。
超新星2008Bも高根沢町で発見したものでした。しかし、わずかな晴れ間をぬっ
て今年初めて山形市に設置している60cm反射望遠鏡で捜索を行なったところ、
1月27.455日に撮影した画像上に、15.5等の明るさの新天体が写っていること
に気付きました。直後の27.51日に埼玉県上尾市の門田健一(かどたけんいち)
さん、さらに27.786日にはイタリアのコレリ(P. Corelli)さんによって天体の
存在が確認され、超新星2008Rの符号が付けられました。超新星の位置は、
赤経: 3時03分53.70秒
赤緯:-11度59分39.4秒 (2000年分点)
で、母銀河であるNGC 1200の中心核からは西に12秒角、南に9秒角ほど離れた
ところにあたります。
NGC 1200はその形状からレンズ状銀河に分類され、渦巻銀河や不規則銀河のよ
うに星形成は活発ではありません。そのため超新星2008Rは、大質量星起源の
重力崩壊型のものではなく、白色矮星の核爆発で起きる超新星(スペクトル分
類ではIa型超新星と呼ばれる)である可能性が高いと考えられます。また、発
見の翌日28.838日には、コレリさんによって14.6等まで増光しているところが
捉えられています。この明るさは、この銀河に出現するIa型超新星の極大等級
と合致します。板垣さんの発見は極大の前であったことも推測されます。
今後の分光観測による超新星の分類が待たれるのはもちろんのことですが、
日本人アマチュア天文家による新天体発見ラッシュがいつまで続くのか、たい
へん期待されるところです。
参考文献:CBET 1230 (2008 Jan. 28)
2008年1月29日