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佐藤裕久
投稿日時: 2021-5-17 21:31
モデレータ
登録日: 2005-6-12
居住地: 日本
投稿: 2573
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国立天文台 メールニュース No.227

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 国立天文台 メールニュース No.227 (2021年5月17日発行)
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国立天文台の研究成果やイベント、注目したい天文現象などを、メールで
お届けする不定期発行のニュースです。
どなたでも無料でニュースを受け取ることができます。

◇もくじ-------------------
・研究成果:巨大ブラックホールのジェットを多波長同時観測とシミュレーションで探る
・研究成果:直角に折れ曲がるジェット
・話題  :令和3年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰を国立天文台の研究者らが受賞
・天文現象:皆既月食が全国で見られます(5月26日)
・お知らせ:国立天文台望遠鏡キットで月食を観察しよう
・お知らせ:「ふれあい天文学」今年度の実施校を募集中
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▼研究成果
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■巨大ブラックホールのジェットを多波長同時観測とシミュレーションで探る

 史上初のブラックホールシャドウの撮影に成功したイベント・ホライズン・テレスコープ
(EHT)の研究チーム(2019年4月発表)。地球上の8つの電波望遠鏡を結合させて、楕円銀河
M87の中心にある巨大ブラックホールの観測を行ったのは、2017年4月でした。
 このとき、地球上の各地にある望遠鏡に加えて宇宙空間にある望遠鏡が、一斉にこのM87の
ブラックホールに向けられ、電波、可視光線、紫外線、X線、ガンマ線といった多波長域での
観測キャンペーンが行われていました。この観測の結果、ブラックホールから噴き出すジェッ
トの詳細な姿を描き出すことに成功したのです。
 この観測結果に理論・ミュレーション研究を加えた結果、このジェットが複雑な構造を持つ
ことが示されました。巨大ブラックホールから噴き出すジェットの形成、そして電磁波放射メ
カニズムの解明に重要な手掛かりを与える研究成果です。
 この観測キャンペーンには地上・宇宙から計19の望遠鏡が参加し、さらに国立天文台の天文
学専用スーパーコンピュータ「アテルイII」によるシミュレーションが加わり、32の国と地域
から総勢760名を超える研究者が参加しています。
(2021年4月14日発表)

▽多波長同時観測でさぐるM87巨大ブラックホールの活動性と周辺構造
 ―地上・宇宙の望遠鏡が一致団結―
・EHT-Japan ウェブサイト
 https://www.miz.nao.ac.jp/eht-j/c/pr/pr20210414
・国立天文台 ウェブサイト
 https://www.nao.ac.jp/news/science/2021/20210414-eht.html


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■直角に折れ曲がるジェット

 はと座の方向にある銀河団「Abell 3376」は、大小2つの銀河団が衝突している現場です。小さ
な銀河団の中心に位置する銀河「MRC 0600-399」の中心にはブラックホールがあり、そこから噴
き出すジェットの存在が知られていました。
 電波干渉計を用いた高解像度の観測を行ったところ、このジェットは、銀河団の衝突が進んで
いる向き、つまり風上側に直角に曲がり、しかも細く絞られた形状をしていること、さらに風下
側にもジェットが存在するという不思議な構造が捉えられました。このような特徴を説明するた
めには、銀河団の運動によって受ける風の影響だけでなく、銀河から噴き出すジェットと、銀河
団の中に存在する複雑な構造の磁場との相互作用も併せて考える必要があります。
 この研究では、観測で得られたジェットの特徴を、スーパーコンピュータ「アテルイII」を用
いたシミュレーションで再現することに成功しました。ジェットの形状を詳細に調べることで、
直接観測することが難しい磁場の構造を明らかにするという新たな手法が得られたのです。
 この研究内容の詳しい紹介と共に、ジェットと銀河団磁場の相互作用のシミュレーションを可
視化した興味深いムービーもぜひご覧ください。また、研究内容の詳細を研究者が直接語るムー
ビーも近日中に公開予定です。
(2021年5月6日発表)

▽直角に折れ曲がるジェットが描き出す銀河団の磁場構造
・天文シミュレーションプロジェクト ウェブサイト
 https://www.cfca.nao.ac.jp/pr/20210506
・国立天文台 ウェブサイト
 https://www.nao.ac.jp/news/science/2021/20210506-cfca.html


▼話題
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■令和3年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰を国立天文台の研究者らが受賞

 国立天文台の市民天文学プロジェクト「GALAXY CRUISE(ギャラクシークルーズ)」のメンバーが、
令和3年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰の科学技術賞(理解増進部門)を受賞しました。受賞者
は、天文情報センターの臼田-佐藤功美子 特任専門員、ハワイ観測所の田中賢幸 准教授、小池美知
太郎 特任専門員、柴田純子 事務支援員の4名です。受賞対象となった業績は「すばる望遠鏡ビッグ
データを用いた市民参加型研究の普及啓発」です。
 すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラHyper Suprime-Cam(HSC)で撮影された広大な範
囲の宇宙画像には、おびただしい数の銀河が映り込んでいます。この中には「衝突銀河」と呼ばれる
たいへん特徴的な形の銀河も多数含まれており、その形の特徴や数を調べることは、銀河の生い立ち
をひも解き、その多様性の謎に迫ることにつながります。この膨大な数の衝突銀河の分類を、市民の
力を借りて進めるプロジェクトが「GALAXY CRUISE」です。
 2019年11月のプロジェクト開始以降、多くの市民の参加によって科学的な解析に足りる分類数が集
まりつつあります。近い将来、研究者と市民が一体となった「GALAXY CRUISE」を通じた研究から、
すばる望遠鏡のビッグデータを用いた興味深い研究成果が生み出されることが期待できます。

 また、国立天文台先端技術センターの小嶋崇文 准教授が、同表彰の若手科学者賞を受賞しました。
受賞対象となった業績は「電波天文用受信機の高感度化および広帯域化に関する研究」です。
 小嶋准教授は、アルマ望遠鏡に搭載する受信機の開発研究をリードしています。その受信機の中で
も最も高い周波数帯の電波を観測する「バンド10」受信機の開発に貢献し、加えて超伝導受信機の中
核となる「超伝導ミキサ」の研究も続けています。また、現行の受信機よりさらに広い周波数帯域を
一度に観測可能で、かつ感度も向上させた新しい受信機を開発中です。

 「科学技術分野の文部科学大臣表彰」は、科学技術に関する研究開発、理解増進等における顕著な
成果を収めた者を表彰するもので、令和3年度の受賞者が2021年4月6日に発表されました。

▽令和3年度科学技術分野の文部科学大臣表彰受賞者の決定について(文部科学省)
 https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/mext_00547.html
▽国立天文台 市民天文学プロジェクトGALAXY CRUISE
 https://galaxycruise.mtk.nao.ac.jp/
▽国立天文台 アルマプロジェクト
 https://alma-telescope.jp/


▼天文現象
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■皆既月食が全国で見られます(5月26日)

 5月26日の夜、満月が地球の影に隠される皆既月食が起こります。この月食は、日本全国で観察する
ことができますが、北海道西部、東北地方西部、中部地方西部、西日本では欠けた状態の月が昇って
くる「月出帯食(げつしゅつたいしょく)」となります。食の予報は次のとおりで、各地とも同じ時
刻です。

 部分食の始まり 18時45分
 皆既食の始まり 20時9分
 食の最大    20時19分
 皆既食の終わり 20時28分
 部分食の終わり 21時53分

 皆既中(地球の影に月の全体が入った状態)の月は、「赤銅色(しゃくどういろ)」と呼ばれる赤黒
いく暗い輝きになります。月の表面の色の変化に注目しながら、皆既月食を楽しみましょう。ただ、月
が昇ったばかりの頃に低い空で見られる現象となるため、南東の方角が開けた場所で観察することをお
勧めします。
 今回の月食の見え方を、YouTube国立天文台チャンネルで紹介しています。また、当日はYouTubeでの
ライブ配信も予定しています(注)。ぜひご覧ください。

 この日の月は、地球からの距離が2021年で最も近い状態の満月になります。地球からの距離が最も遠
い状態の満月に比べると、視直径は約14パーセント大きく見えます。
 12月19日には、2021年で地球から最も遠い状態の満月となります。その前の満月である11月19日も地
球からの距離が遠い状態ですが、このときの満月は部分月食となります。11月19日の月食は月の大部分
(月の直径の約98パーセント)が地球の影に隠され、皆既食に近い状態のたいへん「深い食」になりま
す。

 注:ライブ配信は、天候やその他の状況により、予告なく中止・中断する可能性があります。あらか
じめご了承ください。

▽YouTube国立天文台チャンネル
 https://www.youtube.com/user/naojchannel
▽ほしぞら情報(2021年5月):皆既月食
 https://www.nao.ac.jp/astro/sky/2021/05-topics03.html
▽ほしぞら情報(2021年11月):11月19日は部分月食
 https://www.nao.ac.jp/astro/sky/2021/11-topics03.html
▽国立天文台 暦計算室
 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/


▼お知らせ
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■国立天文台望遠鏡キットで月食を観察しよう

 5月26日の皆既月食を、国立天文台望遠鏡キットを使って観察してみませんか。月食は肉眼でも楽しめ
る現象ですが、望遠鏡を使うと皆既中の月の色の変化もより詳しく知ることができます。
 5月26日に皆既月食となる満月は、2021年で最も地球に近く大きく見える満月でもあります。また、11
月19日に部分月食となる満月は、2021年で最も地球から遠く小さく見える満月(12月19日)とほぼ同じ
大きさです。この大きな満月と小さな満月の月食を、写真に収めてみましょう。国立天文台望遠鏡キット
にはスマホ用のアダプタが付属していて、これを使えば手軽に月食の写真を撮影することができます。同
じ倍率で撮影すれば、この2回の満月を比べて、大きさの違いを実感することもできるでしょう。
 国立天文台望遠鏡キットは、学校や家庭で手軽に天体観察を楽しんでもらおうと、国立天文台が企画し
た天体望遠鏡です。国立天文台望遠鏡キットのウェブサイトでは、その特徴や入手方法を紹介しています。

▽国立天文台望遠鏡キット
 https://www.nao.ac.jp/study/naoj-tel-kit/


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■「ふれあい天文学」今年度の実施校を募集中

 国立天文台の研究者が全国の小中学校を訪問して天文・宇宙の授業を行う「ふれあい天文学」。例年40名
を超える天文学者が、星や宇宙の話題を全国の教室に届けている大人気の事業です。新型コロナウイルス感
染症拡大もあり、昨年度は対面授業だけでなくオンライン授業を取り入れた新たなスタイルに挑戦しました。
今年度も同様に、対面授業だけでなくオンライン授業も取り入れたかたちでの授業を継続する予定です。
 現在、今年度の「ふれあい天文学」の実施校を募集中です。募集の締め切りは5月31日(月)です。詳しく
は「ふれあい天文学」のウェブサイトをご覧ください。
 この「ふれあい天文学」は「天文学振興募金」の支援を受けています。実施校における講師旅費・謝礼等
の負担はありません。

▽出張授業「ふれあい天文学」実施校募集中
 https://www.nao.ac.jp/news/topics/2021/20210407-fureai.html
▽ふれあい天文学―あなたの教室に天文学者を届けます!―
 https://prc.nao.ac.jp/delivery/
▽天文学振興募金
 https://www.nao.ac.jp/bokin/


◇編集後記-----------------
今回からスタイルをリニューアルしました。
配信の間が空いてしまったために、ご紹介したい話題も盛りだくさんになってしまいました。配信が遅れたこ
と、ならびに長文になったことをお詫びします。
これからも、国立天文台の研究成果やイベントの紹介を中心に、さまざまな話題を取り上げていきたいと思い
ますので、よろしくお願いいたします。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室
発行日:2020年5月17日

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© 1999 Tsutomu Seki.