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     アンドロメダ座PQ、32年ぶりのアウトバースト
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佐藤裕久
投稿日時: 2020-6-2 7:12
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登録日: 2005-6-12
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投稿: 2503
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アンドロメダ座PQ、32年ぶりのアウトバースト

                           VSOLJニュース(363)

                アンドロメダ座PQ、32年ぶりのアウトバースト

                       著者:大島誠人(兵庫県立大学西はりま天文台)
                                            連絡先:ohshima@nhao.jp

 矮新星アウトバーストを示す激変星は数多く知られていますが、その頻度は
天体によって大きく異なります。短いものでは数日間隔でアウトバーストを繰り
返す天体もありますが、長いものになると数年以上ということも珍しくありません。
欠測による見落としやシーズンオフで観測できないアウトバーストもあるため、
このようにアウトバースト間隔の長い天体になると正確な間隔についてはなか
なかはっきりしないのが実情です。
 1988年にアンドロメダ座に発見された「新星」もそのような天体の一つでした。
イギリスのMcAdam氏によって10.0等の新天体として発見され、当初は新星と
思われましたが、分光観測などから新星爆発ではなく矮新星アウトバーストに
よって明るくなったものであることが明らかになりました。その後、過去に同じ
領域を撮影した画像から1938年と1967年にもアウトバーストを示していたこと
から非常に長い間隔でアウトバーストを繰り返す矮新星ではないかと考えられる
ようになりました。
 この天体は、のちにアンドロメダ座PQという名称が付けられましたが、その後は
長らくアウトバーストが観測されませんでした。それまでの乾板記録の間隔を
元にすると20〜30年くらいの間隔でアウトバーストしているわけですが、見落と
されているアウトバーストの可能性なども考え、10年に一度アウトバーストする
天体ではないかと疑われた時期もありました。そのため、99年頃にはそろそろ
次のアウトバーストがやってくるのではないかという呼びかけがなされたことも
あったのですが、アウトバーストは観測されませんでした。結局、発見から30年
以上にわたって明確なアウトバーストは見られなかったのです(14〜15等くらい
のごく暗いアウトバーストが疑われる観測はいくつかあります)。ですので、はっきり
したアウトバーストとしては、32年ぶりということになります。
 発見したのは、愛知県の広沢憲治(ひろさわけんじ)さんです。5月29日(日本時)
の明け方の空で、10.48等(デジカメG等級)に明るくなっているところを発見され
ました。その後、インターネット上に発見報告がなされ、それをうけたヨーロッパの
観測者によっても追観測が行われました。

  YYYYMMDD(UT)   mag  observer
  20200320.4656 <145c  (Yutaka Maeda、長崎県)
  20200322.8583 <145  (Chris Allen、スウェーデン)
  20200528.7763 10.48cG  (Kenji Hirosawa、愛知県) 発見
  20200529.0799  103  (Eddy Muyllaert、ベルギー)
  20200529.087   105  (Gary Poyner、イギリス)
  20200529.783   107  (Hiroyuki Maehara、岡山県)
  20200530.067  109CV  (Klaus Wenzel、ドイツ)

 明け方の低い空でしか見ることが出来ず、観測できる時間が短いためにまだ詳しい
観測は行われていませんが、アウトバーストの間隔や振幅の大きさから、矮新星
のうちのや座WZ型矮新星に属する天体である可能性が高いと思われます。この
グループの天体はアウトバーストの頻度が特に稀なことで知られますが、アウト
バースト間隔が良く知られているもので20年を超えるものはごくわずかしかありません。
今回のアウトバーストでアンドロメダ座PQのアウトバースト間隔も30年前後である
可能性が高まったわけで、非常に珍しい天体といえるでしょう。また、アウトバースト
の最中にスーパーハンプと呼ばれる短周期変動が見られるタイプのアウトバースト
(スーパーアウトバースト)であろうと思われます。
 アンドロメダ座は赤緯が高いために北半球の中高緯度地域では一年中観測
できますが、合になる5月頃は夏至に近いために実際には観測はなかなか困難です。
特にPQ Andはペルセウス座に近いためまだ明け方低い空にしか上がってきません。
上記の観測でも、3月22日の観測で前シーズンが終わった後、合をはさんでシーズン
初めての観測がアウトバースト発見だった、ということがおわかりかと思います。
 近年、世界各地でサーベイ望遠鏡などが数多く稼働するようになり、矮新星のアウト
バーストもこれらサーベイチームの手による第一発見が増えてきました。しかし
空は広大であり、それでも全ての矮新星のアウトバーストが捕捉されているわけでは
ありません。今回の発見は、そんな従来のような変光星観測者によるモニターの
重要性を改めて示したものともいえるでしょう。
 悪条件のなかで見事にアウトバーストをとらえた広沢さんに拍手を送りたいと
思います。

参考文献
Hurst, G. M. ''Variable in Andromeda'', IAUC 4570 (1988)
Patterson, J. et al. ''The Dwarf Nova PQ Andrimedae'', PASP, 117, 922 (2005)
Richter, G. A. ''"Nova" PQ And - Further Outbursts'' IBVS, 3546, 1 (1990)
Wade, R. A. "NOVA ANDROMEDAE", IAUC4629 (1988)
渡辺努「WATCHER'S GUIDE 変光星」、「月刊天文」1999年1月号
vsnet-resent-ug 158244
vsnet alert 24301, 24302, 24303, 24304, 24307 

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