VSOLJニュース(387)
こぎつね座に新星が出現
著者:前原裕之(国立天文台)
連絡先:hiroyuki.maehara@nao.ac.jp
こぎつね座の中に7月29日に新たな古典新星が発見され、9等台まで明るくなりま
した。この新星を発見したのは、ロシア連邦カラチャイ・チェルケス共和国に設置
したカメラによる銀河面付近の新天体サーベイ"New Milky Way" (NMW) surveyを
行なっているグループで、7月29.832日(世界時; 以下同様)に撮影した画像から、
こぎつね座の中に11.2等の新天体を発見しました。山口県の吉本さんの観測による
と、この天体のの正確な位置は
赤経: 19時 43分 07.50秒
赤緯: +21度 00分 21.4秒 (2000.0年分点)
です。この天体は群馬県の小嶋さんが発見の0.3日前の7月29.513日に撮影した画像
には14等以下で写っていないことから、発見直前に急激に明るくなったものと思わ
れます。
この天体の分光観測は7月30.47日に京都大学岡山天文台の3.8mせいめい望遠鏡を
用いて行なわれ、この天体のスペクトルにP Cygプロファイルを持つ水素のバルマー
系列や中性酸素の輝線が見られること、P Cygプロファイルの吸収成分は輝線成分に
対して秒速1900 kmほど青方偏移していることが分かりました。このようなスペクト
ルの特徴から、この天体が極大光度付近の古典新星であることが判明しました。
この天体は7月30日に9等台後半まで明るくなりましたが、その後は7月31日に10等
台前半、8月1日には10等台後半まで暗くなったことが観測されました。今後の明る
さの変化が注目されます。なお、この天体にはこぎつね座V615と変光星名がつけら
れましたので、以後の観測報告はこの名称でお願いします。
新星の画像
・NMW survey撮影
https://scan.sai.msu.ru/~kirx/img/PNVJ19430751+2100204/finder_charts_PNG/finder_chart_0128pix_targetmark_v22.png
・吉本さん撮影
http://orange.zero.jp/k-yoshimoto/PNV_J19430751+2100204_20240730.jpg
参考文献
CBET 5423: V615 VULPECULAE
Taguchi, K., 2024, ATel #16743
Valisa, P., Munari, U., 2024, ATel #16746