« 2015年06月 | メイン | 2015年08月 »

2015年07月14日

冥王星への想い

 いまNASAの無人探査機が接近中の準惑星「冥王星(めいおうせい)」は私が生まれた1930年に発見された関係で、私には特別な思いがありました。
 発見した当初はいて座であったという事ですが、その冥王星は現在同じいて座にいることに気づき、芸西天文台の70cm反射望遠鏡で撮影を試みました。下元(しももと)さんの調査では天の川の微光星の多い中に14等星として写っています(矢印)。約1時間後に2度目の撮影を行いましたが、遠いので2枚の写真を見比べても移動がわかりづらいです。しかし、2枚の写真を交互に表示させてみると、移動している様子がよくわかります(3つ目の写真)。

 私はかねてから疾患のあった心臓部の手術から退院後の2日目の観測行ですが、少し無謀かな、と自分でも反省しました。


冥王星
2015年7月15日0時頃
芸西天文台 70cm F7反射望遠鏡 + Nikon D700


冥王星周辺を拡大


1時間後に撮った画像と交互に表示
(中央で移動している天体が冥王星)

 1930年、冥王星を発見したトンボー氏について1970年代に取材に来たBBC放送のトーマスプロデユーサーは、「宇宙の驚異」と言う番組を製作するにあたって、世界中の有名な天文台を訪ね取材しました。まだ芸西天文台が無かった頃で、私の家にも来てロケを行いました。この取材の様子はイギリスの作家によって本になり、私も所持しています。
 冥王星は1930年トンボーが、ローウェル天文台2代目スライファーの指導の下、火星の運河説で有名な初代ローウェルによって始められた第9番目の惑星の捜索中に発見されました。
 BBCのトーマスさんはローウェル天文台でトンボー氏に会ったとき、彼はUFO(未確認飛行物体)を信じるただ一人の天文学者で、冥王星発見の話の他に余談として、謎の飛行物体の話を聞かされたそうです。「砂漠の中の天文台の上に良く訪れて旋廻する」と言ったそうですが、冗談なのか本気なのか判断できなかったそうです。
 天文の映画は日本では放送されませんでしたが、それを見たスミソニアンの故マースデン博士が「私もいずれ高知を訪ねたい」と言ってきました。彼の思いはハレー彗星の去った翌年の1987年に実現しました。

2015年07月05日

病床の窓

 心臓病があって高知市の赤十字病院に入院しました。手術を経て10日くらいで退院する予定です。若いころから病気ひとつせずに天文観測に携わってきましたので、我が生涯の特別な期間になりそうです。
 高知市の中央から、やや北東寄りの6階の病室から、北の山並みが見えます。この低い連山のすぐ向こうが四国山脈になります。


病棟から北を望む

 真北の山(正蓮寺高原)は標高350~400mで、高知県で最も早くゴルフ場のできた山です。思えば1965年9月、かの”イケヤ・セキ彗星”を追っかけ、暁の空に無事な彗星の全景と対面したのも、この山でした。雲と木立にかかった白い曲がった尾、懐かしいですね。
 そう!イケヤ・セキ彗星の発見から、今年の9月で満50周年になるのです。
 遠い美しい夜景を眺めていると、南国市の点々たる町明かりの上の彗星の姿が思い出されます。この彗星の発見は世界中の多くの人との友情のつながりができました。


病床からの夜景

 私は自分の名刺に、この彗星が太陽コロナの中を通過中の写真を印刷してあります。この小さな写真を見るだけで、私が何者であるのか、何よりも分かってくれるのです。
 いまはプロの掃天によって、たくさんの微光の彗星が発見されますが、彗星の発見は何と言っても眼視発見が華ですね。
 ああ夢よもう一度!!