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2007年11月19日

火星と金星が明るくなりました

 ホームズ彗星が依然として北空のペルセウス座に肉眼で見えています。北に高いので、ほとんど一晩中見えるのは楽しいことです。そして光度や形状、更に色の変化も結構楽しませてくれます。尾ほ依然として短い「クラゲ」のような格好ですが、コマは更に淡く膨らんできて、まるで霧のような様相を呈しはじめました。
「芸西天文台通信」のページに発表した写真は、コマが半透明のもっとも美しい頃のものです。この頃はまだコマの輪郭がはっきりしていました。

 さて12月下旬に大接近する火星ですが、いよいよ赤さを増してきました。いま双子座にあって、ひときわ明るく輝いています。
 そして、夜明けの近い5時前になると、西方最大離隔に近い金星が煌々と、断然白い光を見せはじめます。彗星の捜索をやっていても、その明るさが気になります。

 芸西の天文台では、現行の60cmの最後の観測会が12月22日に行なわれます。「冬の天文教室」ですが、接近中の火星を60cmの主鏡を使って覗くことにしています。12月には火星を対象にした観測会が何回か行なわれます。見学希望者は「高知県文教協会」電話 088-824-5451 まで連絡して下さい。


ふたご座の火星
2007年11月19日 1時33分から5分間露出
55mm F2.8 ISO400


昇る金星
2007年11月20日 4時20分から20分間露出
55mm F2.8 ISO400

2007年11月13日

空にホームズ彗星、地上にも「ホームズ」

 しばらく日記を休んでいる間に秋が随分進みました。
 今朝は久しぶりに東天を捜索しました。しし座から始まって、夜明け前には、小銀河の多い「かみの毛」から「おとめ」そして「からす座」と進んでいきました。テレスコに小型のナビを取り付けたので、入ってくる彗星状天体の識別に有効でした。基準星は第一が北極星、第二が90度ほど離れた、ししのレグルスを選びました。
 可也の精度で位置を表示してくれました。スケッチくらいの精度でしょうか。スカルナテ・プレソの星図でことごとくチェック出来ました。
 しかし捜索しながら発見にはほど遠い観測だと思いました。天体写真のような、他の仕事をしながらの掃天ですから、本格的ではありません。発見しようと思うなら、そのことだけに集中しなくては成果が上がらないことは自分でも分っているのです。もっともっと捜索に専心したい、、、、。そのことは重々身に感じているのですが。いまの多様な観測方式ではなかなかできません。彗星発見のみを意識して若き純粋な情熱を捧げたあの頃を懐かしく思います。
 「シャーロック ホームズ」の怪奇小説を読んでいたら、天上にも「ホームズ」があらわれ、奇怪な行動に出ました。シャーロック ホームズの物語はイギリスのロンドンが舞台ですが、星の「ホームズ」の方も、1892年、小説が書かれた頃のロンドンで発見されました。発見の年にも異常な増光があって、アンドロメダ座のM31の側に4~5等星で輝きました。本来が明るい彗星であって、その後の100年間光度を落としていたのか、或いは暗いものが、太陽活動等の影響で、まれに突然明るくなるのか、その点は判然としませんが、恐らく後者の方でしょう。いずれにしても、頭上に明るい彗星が輝く下での捜索は楽しいものです。この日11月12日、23時の50mm双眼鏡による私の観測では、全光度2.6等。コマ30分角。色は青白で尾はわずかに西北に流れているようでした。増光の始まった頃の美しい黄金色のコマとは違った彗星らしいブルーでした。芸西での60cmによるカラーの写真は、近日「芸西天文台通信」のページにてお眼にかけます。

2007年11月12日

宇宙に浮かぶ奇怪なクラゲ「ホームズ彗星」

 11月11日の朝、2時ごろのイプシロン21cmによる撮影です。
 彗星は、ペルセウス座の1.8等星アルファより明るく写っています。眼視による光度は2.5等で、コマは大きく拡大され、月と同じ30′近くもありました。美しいグリーンです。尾は大勢が太陽との関係であちら側に流れていますから、明確ではありませんが、コマの形からして、やや西に出ているようです。まさに「宇宙に浮かぶ奇怪なクラゲ」です。
 先月末、謎の大爆発を起こしてそれまでの17等級から、一挙に2等星までアップしましたが、これは太陽光の反射だけでは説明できません。恐らく爆発によって、新星現象のように彗星自体が発光を始めたのです。そのエネルギーは測り知れないものがあります。そして、コマの色も、金色から、白、そしてブルーからグリーンへと目まぐるしく変化して行きました。彗星は、普通モーローとしているものですが、コマの輪郭がまるで、お月さんを見るようにくっきりとしていることも異常です。
 この星を発見したのは1892年の、ロンドンの「ホームズ(Holmes)」ですが、この彗星の謎の多い不可解な現象から同じイギリスの怪奇探偵小説「シャーロック ホームズの冒険」のことをふと連想しました。舞台はたしか同じロンドンでしたね。まさに奇怪な事件?の連続です。この彗星は1992年に芸西で再発見していますが、あの時も暗いだけで光度の変化は全く見られませんでした。今回は115年前の出現以来17回目の回帰です。
 さて次回はこの新星現象の如く変化した彗星をカラーでお眼にかけます。私の彗星探索史上このような”事件”は初めてで「関勉の捜査日記」にしっかりと書きとめておきましょう。


ペルセウス座α星のそばのホームズ彗星
17P/Holmes
2007年11月11日2時16分から19分間露出
ε210 21cm F3反射
TX400フィルム