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2005年05月10日

 所用のため高知道を

 所用のため高知道を走って松山に行き、帰りは新緑の美しい仁淀川(によどがわ)沿いの33号線を通って帰宅しました。車の走行距離はこの10年間で19万3千キロ。夕方自宅に着くと、夜また芸西に走りました。
 人は大変だと思うかもしれない。しかし生涯現役で観測の仕事を続けることこそ幸せであり人生の華だと思うのです。往年の観測者や発見者が、今はリニア等の活躍で辞めてしまった人が居られますが、折角の業績も辞めてしまえば忘れられます。何時までも自分の道を歩み続けることこそ真の生きがいだと思います。道は遠く険しくとも、彼方に輝く理想の光を見失なってはなりません。
 色あせた古いアルバムを見ていたら、1961年の「セキ彗星」発見前夜の1961年9月15日、三嶺(みうね)の深い山中をさまよっていた頃の自分の写真がありました。長い険しい山道には人生の縮図があった。この日を期して悟りを開き私の人生は変わりました。発見への絶望から五里霧中の中を模索し悩んでいた頃の私です。
[三嶺で撮った写真]
三嶺の谷間で
1961年9月

2005年05月07日

 芸西天文学習館春の

 芸西天文学習館春の天文教室です。昼間から非常に良く晴れ、40名余りの方が集まりました。お年よりから小学低学年まで実にバラエティに富んだ年齢層の人たちで、中には数名の高校生も混じっていましたが、昔から星を見に集まって来る人たちは皆礼儀があり真面目でよい人たちだと感心させられます。帰った後、おびただしいスリッパが、下駄箱の中に小さな子供の分まで整然と並べられてあるのを見てホットしました。大人の指導によるものでしょうか。当然の事ながら、今では守られにくくなっているエチケットが星の勉強だけではなく、こうした会によって子供たちに教えられていくことは良いことだと思っています。野外では松木公男講師による星座観察が熱気をおびて面白かった。高齢を理由に引退を公言されながら駆けつけた岡村啓一郎講師のボーデの法則を中心にした惑星の話も氏独特のユーモアがあって聴衆に感動をあたえました。しかし今夜のシーイングの良さはどうした結果でしょうか!!まるで大気がない様に、昔の鮮明なカラーでの上手なスケッチを見るように全く静止し、あの普段は見難いカッシニの空隙がアリアリと見え、タイタンを初めとする幾つかの衛星も手にとる様。このようなことは10年に1回有るかなしかの現象で、この日集まった人は幸せだと思いました。こうして他に木星を見たりして21時まで天体観測を楽しみました。
 「ホウキ星と50年」の冒頭に書いたように、この60cmの望遠鏡を贈った五藤斉三氏は、このように天文台が多くの人によって利用されることを特に願って、観測会の晩には幽霊となって現れ、茂みの影からその様子をきっと眺めて喜んでいるに違いない。深夜天文台を降りるとき暗い小道で白い着物を着た老人と今夜もすれちがうのではないかと怖い気持ちでした。
 「五藤さん!貴方の贈った天文台はこうしていつも立派に役立っています。どうかご安心ください。」
 私は心の中でそう叫びながら足早に山を降りました。

2005年05月03日

 皐月晴の良いお天気

 皐月晴の良いお天気が続きます。夕方から天文台にやって来て朝まで頑張りました。穏やかな気流でシーイングは大変良かったのですが時々薄い雲に視界が遮られました。
 夕方天頂付近に見えているテンペル第1彗星を20cm 60倍の屈折望遠鏡で覗きました。11.5等~12.0等の間で暗いながら良くみえています。写真は最近60cmの反射望遠鏡で撮ったもので、南に短い60"ほどの尾が見えています。このほかマックホルツ彗星は北天で9等級に落ちました。
 朝3時になって久々に東天の低空を捜索しました。今回は新兵器を使用しました(従来はニコンの12cm 20倍の双眼鏡を使用していました)。そして夜明け前30分になると、場所を上の丘に移動して9cm17倍のコメットシーカーに変えるのです。と言うのは東に高い森があって、低空の視界が遮られているからです。この新しい双眼鏡はある程度天体を意識して設計されたようで、視野の中央から端にかけて安定した良い星像を結びます。マルチコーティングのせいか映像は極めて明るくまたコントラストが良い。1951年秋、うしかい座に1回見ただけでその後1度も入ってこなかった、11等級で視直径3'の球状星団が50年振りに見えました。午前4時になってアンドロメダのM31が悠々と入ってきました。
 30年ほど前でしたでしょうか。5月1日の朝、6等級の新彗星がM31のそばに現れて、日本で8人ほどの独立発見者が名乗り出ました。結局「タゴ・ホンダ・ヤマモト彗星」に収まりましたが、彗星というものはある日の突然の出会いですから常に努力を怠ってはなりません。山形県の板垣公一さんや青森県の伊藤勝司さんもこの日独立発見し、実は私もこの朝見ていたのでした。
 捜索をやっていたらいろいろと昔のことを思い出すものです。例え新彗星が見つからなくても彗星の捜索ほど星空の美観を満喫できるものはありません。そうしてあせらずリラックスして励むようになったら、発見も近いのです!
[テンペル第1彗星の写真]
テンペル第1彗星 9P/Tempel 1
2005年5月2日 22時51分から7分間露出
芸西天文台60cmF3.5反射望遠鏡 TX400フィルム