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2004年10月27日

 よく晴れました。満

 よく晴れました。満月ですが、太陽接近と共に消えたかもしれない彗星、 C/2004 R2 (ASAS) のことが気になって天文台に来ました。
 落日後30分で、丁度西の赤い夕焼けの中にマイナス等級の水星が輝いていました。その明るい事と美しいことに一瞬目を見張りました!まだ昼間のような明るさのなかにこの様な明るい水星を見たのは初めてです。高知竜馬空港を飛び立ってやって来る飛行機の明るいライトかと思いました。
 秋晴れの行楽シーズンで、あいにく下のグラウンドでナイター(草野球ならぬ草サッカー)をやっていましたので肝心の西が明るく、60cmを向けましたが8等級のはずの彗星は見えませんでした。写真も3分の露出で大変なカブリ! いずれにしてもC/2004 R2彗星は大変衰弱した事は否めないでしょう。
 帰りに車のラジオを聴いていましたら、四国で珍しく徳島県の池田町で2頭の熊が発見された事をアナウンスしていました。高知県と徳島県の県境付近は高い山の立ち並ぶ大変山深いところ。熊が出てもおかしくない所で、専門家によると10頭余りのツキノワグマ(月ノ輪熊)が生息しているそうです。芸西天文台は高知市よりむしろ徳島県に近い所で、先日目撃した黒い動物はクマだったかしら....と、戦慄を感じました。”黒い魔物”の目撃は2回目です。
 話は余談になりますが、県境の三嶺(みうね)付近や、平家の落人が住んでいたと言われる祖谷(いや)の山奥は好んで独り旅をしたところです。30年ほど前、体長5mを超す大蛇が目撃されたところです。いつかそのような危険な動物に遭うかもしれないと思うと一人登山が恐ろしくなりました。独り山道を黙々と歩きながら、ホウキ星発見のことばかり考え夢みていた若いころが懐かしいです。いまも勿論山を歩きながら星のことばかり考えています。その様な何気ない散策のなかに、ふと名案が閃くのです。

2004年10月18日

 60cm望遠鏡の定

 60cm望遠鏡の定期点検で五藤光学から真野さんが来て三日間の作業が始まりました。五藤は日本光学や三鷹光機らとならぶ光学メーカーですから、後の補修もしっかりとしており、いつも完璧な作業をしてくれます。今はプラネタリュウムが本業ですが、造ったものはいつまでもちゃんとした面倒を見てくれるのです。いい加減なメンテをやって結構高いところがあるのですが....。
 60cmは赤経方向のモーションに乱れが出ていましたが、これは早送りのスピードをやや落とすことですぐ直りました。20年以上も昔のICを使っていますから、いまは基盤を交換するにしても部品がありません。大改造するにしても金がかかるので、古い部品を探し出して来たりして、急場を凌いでいます。しかし遠からず改造する時期がやって来ると思います。そうなれば新しいモーター駆動によるCCDでしょう。
 天文台のすぐ下の「桜が丘公園」で驚くことに桜が咲いていました。ほんの一部咲きといったところですが、この温かさによる気象異常でしょうか?
 台風23号が去れば芸西での秋の本格的な活動が始まるでしょう。

2004年10月13日

恐怖の天文台の夜

 お天気がやっと回復したのですが、空がガスっぽくってなんだか透明さに欠けていました。11日のときは終夜雲に悩まされましたが、いったん晴れ間が見えだすと物凄い星空で、夜明け前の捜索では、普段低空では困難なしし座の星雲が視野の端でひっかかってきましたのに、今日は中央でも9.5等の同星雲がやっと見えるような悪条件でした。従って秋特有の黄道光も、かすかに天の川と場所を分けていました。
 ドームの外で流星に注目していたら、暗い茂みの中からドドッと大きな足音がして黒い魔物?が飛び出しました。「オオッ 熊!?」 慌ててドームに飛び込みましたが、猪(いのしし)はいても熊は例外でしょう。しかし四国とは言え、芸西の山中はどこに何が出るかわからない怖いところです。

 夜半にはP/2004 R3 (LINEAR-NEAT)の光跡を30分かけて追いましたが、多分フイルムのカブリに負けたでしょう。彗星の全光度は19.2等!
 今夜半、C/2004 Q1 (Tucker)は眼視で10.3等、C/2004 Q2 (Machholz) は8.3等で20cmの60xでよく見えています。どちらも淡い尾があります。

 帰路、駐車場までの山道を通りながら”森の主”のいる暗い茂みの中を見ましたが、今日も眼は光っていませんでした。

 さて「コメットシーカーの怪」しばらくご無沙汰していますが、次回その最終回として、このほど見つかったツアイス製の幻のコメットシーカーの設計図からそのルーツを探ります。

2004年10月09日

 高知県

 高知県土佐郡土佐町の公民館で壮大な宇宙と夢を語る天文講演会が開かれました。
 講師は国立天文台助教授の阪本成一氏で2012年からアンデス山中で稼動することになった、日本と北アメリカ、ヨーロッパの三国が共同で作る大電波望遠鏡(アルマ計画)についての説明と、その意義について実に懇切に分かり易く講演されました。標高5000mのアンデス山中に8年後には壮大な電波望遠鏡群が完成し、宇宙の果てに向かっての活動が始まります。阪本先生は遠くの若い銀河をキャッチすることでスバルやハッブル宇宙望遠鏡も及ばない新しい境地を開くことに情熱を燃やされていましたが、このような天文学の最前線を伝えるような講演会が、土佐の一寒村で開かれたことに、驚きと意義を感じます。これも地元出身の重光先生の働きによるものでしょう。
”自由は土佐の山間より”と言う言葉がありますが、このような会が度たび行われて行くと(昨年もありました)、やがて土佐の山間より有望な天文学者が輩出するかもしれません。
 講演と同時に上映されたアンデスの星空と風土自然は驚異以外の何者でもありませんでした。暗黒の5000mの山岳地帯の空に輝く星は天頂も地平線も同じ埃のような星、ほし.....。地元の人々は余りにも天の川の光が強くて、星座はその中に穴を開ける暗黒星雲のかたちで鳥や狐をイメージして作ったそうです。天文台の空に浮かぶ大小2つのマゼランの異様な輝きと、ドームの間わ流れ落ちる”光の滝”天の川の物凄さには思わず息をのみました(写真2)。アンデスでは星の光だけで車が運転できるそうですが、5年前に4200mのマウナケアに上がったときも、運転手が無灯火で走行した事を思いだしました。
 ああ!光害の無いところで星の観測をやりたいですね!

(写真1) アンデスの巨大電波望遠鏡について講演する阪本成一氏


(写真2) アンデスの星空
左に大小のマゼラン雲、右に天の川
右の人は重光氏