国立天文台・天文ニュース (598)
ニート彗星と明るさを競う?! 新発見のリニア彗星
10月中旬、リンカーン研究所チームにより「ふたご座」に発見された17.5等
級ほどの明るさの移動天体が、その後の10月28日のイギリス、グレート・シェ
フォード(Great Shefford)のバートウィッスル(Birtwhistle, P.)による観測
から、彗星状であることがわかりました。29日にホプキンス山(Mt. Hopkins)
天文台でも確認され、新しい彗星として C/2002 T7 の認識符号が与えられ、通
称はリニア(LINEAR)彗星となりました。
その後の観測や発見前の観測を加えて暫定軌道を求めたところ、まだ太陽か
らかなり遠く、木星軌道の外側にあることがわかりました。これほど遠いとこ
ろで発見されるということは、彗星として大物である可能性が高くなります。
遠くで発見された彗星としては、1995年に6.7天文単位で発見され、1997年には
肉眼彗星となったヘール・ボップ彗星の例がありますし、最近では昨年の8月に
発見されたニート彗星が10天文単位を越える場所で発見され、いまも近づきつ
つあるところです。
求められた軌道はまだ不確かですが、それによると、この彗星が太陽に最も
近づくのは2004年4月末で、順調にいけば、ゴールデンウィーク前後に明け方の
東の低空に、明るく尾を引く姿が肉眼で眺められると期待されています。ただ、
北半球からは低空となって、条件はそれほど良くありません。
特筆すべきは、天文ニュース(511)でもお知らせしたように、この期間、明る
くなると期待されているもうひとつの彗星、ニート彗星(C/2001 Q4)があること
です。しばらくは南天にあるために日本からは見えませんが、2004年のゴール
デンウィークあたりから夕方の南西の低空に見えるようになり、太陽に近づく
5月中旬には、西の空に輝く肉眼彗星になっていると期待されています。条件に
恵まれれば、2004年の5月上旬には夕方の西の空にニート彗星(C/2001 Q4)、明
け方の東の空にリニア彗星(C/2002 T7)と一晩に二つの肉眼彗星が眺められる
かもしれません。また、日本では不可能ですが、4月から5月にかけて、南半球
では明け方の空に二つの彗星を同時に眺めることができそうです。もしかする
と、夜空に二つの尾を引く大彗星の姿が眺められるのかもしれません。
国際天文学連合回報によるC/2002 T7(LINEAR)の暫定軌道要素は以下のとおり
です。
近日点通過時刻 = 2004 Apr.23.685 TT 近日点引数 = 157.770 度
昇交点黄経 = 94.865 度 (2000.0)
近日点距離 = 0.61523 AU 軌道傾斜角 = 160.594 度
参照 IAUC 8003(Oct. 29, 2002).
2002年11月10日 国立天文台・広報普及室
[2002年11月11日 0時19分25秒]