記事タイトル:マイクロクエーサー V4641 Sgr がまたも活動的に 

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お名前: 佐藤 裕久   
VSOLJ ニュース (109)

       マイクロクエーサー V4641 Sgr がまたも活動的に

                                         著者  :加藤太一(京大理)
                                         連絡先:tkato@kusastro.kyoto-u.ac.jp

 V4641 Sgr はマイクロクエーサー (microquasar) と呼ばれる銀河系内のブラック
ホール連星です。この天体は 1999年 9月に巨大な可視光増光が発見され(VSOLJ
ニュース 022参照)、その後の調査によって銀河系内天体でこれまで記録された
中で最も高速のジェット(光速の90%以上)を放出した、大規模な爆発現象であった
ことが明らかになっています。2002年 5月から 7月にかけても活動的な状態になり
(VSOLJニュース 090参照)、特に2002年 7月 7日には瞬間的に閃光のように輝く現象
が記録されました。この瞬間にこの天体は太陽の7000倍以上の光度で輝いたと計算
されており、ブラックホールにガスが落ち込む時に急激なエネルギー解放がなされ
たものと思われます。この天体はブラックホールにまさに吸い込まれようとする
ガスの出す光を可視光で観測できる極めて珍しい天体と考えられています。

 1999年、2002年の現象は以下のページをご覧ください。

  http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/vsnet/Xray/gmsgr.html
  http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/vsnet/Xray/v4641sgr02.html

 この天体が現在再度活動的になっています。8月 1日にオーストラリアの
Rod Stubbings が「普段より1等級程度明るい」とVSNETに通報しましたが、2時間
後の観測では普段の光度に戻っていました。その後 2日間は普段よりわずかに
明るい光度を推移していましたが、8月 4日より巨大な短時間変動が観測される
ようになり、8月 6日には少なくとも10.4等星に達する閃光現象まで報告されて
います。変動の激しい時には強力な双眼鏡でも見えるとの報告が届いています。

 今後、この天体がどのような現象を起こすかまったく予測できません。場合に
よっては、1999年 9月に観測されたような巨大増光につながるかも知れません。
もし同様の現象が発生した場合、現象は地球上の限られた地点でしか観測できな
い可能性が高く、日本を含めたあらゆる経度での観測が重要です。ぜひ連続観測
を試みてください。

 最新情報は以下のページをご覧ください。8月 6日の閃光時の画像も掲載されて
います。

  http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/vsnet/Xray/v4641sgr03.html

 なお、現象があまりにも急激に進展しているため、ホームページの情報には限界
があります。メールによる情報の即時配信(ただし英文)も行われていますので、
この情報をご希望の方は、本文に「V4641 Sgr情報希望」と書いて、
vsnet-adm@kusastro.kyoto-u.ac.jp までお申し込みください。

2003年 8月 8日
[2003年8月8日 20時59分54秒]

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