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芸西天文台通信<1999年3月12日号>


● いまリニア彗星(1998M5)が北極星に近づいています。3月15日の夜21時には10′(月の直径の1/3くらい)まで北極星に接近します。もっとも9等星ですから口径10cm以上の望遠鏡が必要ですが。この現象を知ったとき、今から遠く1981年に現れたパンサー彗星を思い出しました。パンサー彗星が現れた1981年春は芸西天文台が完成の年で、北極星と並んで回転する同彗星を初めて60cm主鏡が捕らえたのです!!

 参考までに2つの彗星の軌道要素を並べてみます。

             パンサー彗星  リニア彗星    備   考  
T(近日点通過) 1981.Jan.27 1999.Jan.24 世界時
q(近日点距離) 1.6573 1.7422 AU(天文単位)
e(離心率) 0.99897 0.99602  
ω(近日点引数) 105.601 101.287 単位(°)
Ω(昇交点黄経) 331.998 333.377 2000.0
i(軌道傾斜角) 82.648 82.228  
P(周期) 64,900 9,140

 以上、やや専門的な数値ですが両者の角度要素他は大変似ています。しかし周期は約6万年と1万年で大差がありますが、このような長周期のものは観測値の如何によって大幅に変ってくるでしょう。これら2つの彗星はもともと1つだったものが分裂してできたのか?或いは生まれ故郷が同一だったのか。いずれにしても万単位の周期をもった両星がわずか19年隔てて北極星をかすめて行くことは面白い現象です。
 − 人類にとって20年は長いが、ホーキ星にとっては瞬間のまたたく時間か!! −

 写真は1980年のパンサー彗星と北極星ですが、今回のリニア彗星もまもなく北極星を通過します。

 もし天候に恵まれたら次回には写真をお目にかけましょう。

北極星とパンサー彗星の写真

北極星とパンサー彗星(1980U)
1981年3月11日 0時15分〜0時25分 10分露出
芸西天文台 60cm反射鏡にて静止撮影

写真左下の星が北極星です。




Copyright (C) 1999 Tsutomu Seki. (関勉)