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芸西天文台通信<2007年9月12日号>


幻のマックホルツ彗星C/1992 N1 (Machholz)のフィルム

 ついに幻のマックホルツ彗星C/1992 N1のフィルムが見つかりました!
 しかし実に淡いネガです。倉庫の中をひっくり返すようにして一週間も探して見つからなかったものが、なんと自分が日ごろ座っている机の抽斗の中から出てきたのです!
 この彗星の写真をマックホルツ氏が探している理由が分かりました。世界中で非常に観測が少ないのです。1992年7月2日、明け方の北空の双子座の近くに発見された同彗星は、7月10日の関の観測を最後としてわずか一週間程度姿を見せただけで、永遠に消えたのです。
 私はそのとき60cmに同架している20cm40xの屈折で見ました。中心集光の淡い3′ほどのコマで、尾がかすかに2′ほど北に流れていました。9.5等星で、位置的に言っても発見の困難な状況で、独立発見者はありませんでした。
 彼はこのころ12cm27xの双眼望遠鏡を使用していました。対空用に造られたもので視界は3.5度あったといいます。
 (芸西の)ニコンは12cmで20x。やはり詳らかに見るには12cmでは25xが要りますね。
 さてこの間に観測された精測は9個、其の内の4個が芸西という貧弱さ。当時の芸西はSAOの少ない比較星を使っての測定で、お世辞にも良いとは申せません。今回出てきた7月10日の観測2個を今のGSC星表と、確かな測定システムによって再測定することにしました。
 彗星はこの観測を最後として消え去ったのです。
C/1992 N1 (Machholz)                                   
1992UT          R.A. (2000.0) Decl.     m1         
July10.78403  05 21 04.94  +30 48 05.6     12.5     372
    10.78715  05 21 05.73  +30 47 57.0     12.5     372
 ※光度は60cmによる(TP6415)写真光度

 この写真のネガは非常に薄いのですが、なんとか見られるように下元さんに画像処理をお願いして、加藤さんを通じてマックホルツ氏本人に届けるよう計画しています。

 なお画像処理した写真は後に「思い出の彗星」のページに掲載したいと思います。

C/1992 N1 (Machholz)の写ったTP6415フィルム


下の画像はフィルムの赤い四角の範囲をスキャンしたもの
赤い2本の線の間にマックホルツ彗星がある
青いマークは位置測定のために使った恒星

C/1992 N1 (Machholz)
1992年7月9日 18時47分(U.T)から4分間露出
60cm 反射望遠鏡 F3.5
TP6415フィルム
芸西天文台(372)


Copyright (C) 2007 Tsutomu Seki.