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芸西天文台通信<2007年1月12日号>


C/2006 P1 (McNaught) , 2P/Encke, P/2007 A1 (Lovas) , C/2006 XA1 (LINEAR) , その他

 近日点距離の小さいC/2006 P1ですが、1月11日の夕刻17時20分に60cmに同架した20cm 40倍の屈折で捕らえました。核は完全な恒星状で、かすかに扇形の尾を上に見せていました。なにしろまだ薄明の残る赤い夕焼け雲の中で、光度の推定は困難でしたが、このような状態で時々見る彗星の状態から判断して、マイナス1等級と目測しました。約10分見えたり隠れたりで雲の中に没しました。核はキラリと明るいけど、大彗星と言うにはほど遠いように思いました。これからぐんぐん南下しますから北半球では益々不利となります。
 このころ有名なエンケ彗星が、西南の低い位置にあり観測しているのですが、2006年の「彗星年表」の予報より2等以上暗いようです。近日点の近くの明るい頃の眼視観測を主にして決定された光度式ですと近日点距離の大きい位置では写真光度は大概暗くなります。予報では15等になっています。
 下の観測で最初の「PK07A010」は最近検出された1986年のロバス2彗星のことですが、いままで20年間も発見されなかったことは1986年の観測が少なくまた精度が悪かったことが挙げられます。1986年はあのハレー彗星のやって来た年で、このロバス彗星は芸西でも何回か観測しました。検出時の光度は18等位で、かなり暗いですが、下の芸西の観測では15等級で明るくなっています。この彗星は消えたことになっていたのですが、ΔTが大きかったので、捜索網にかからなかったものでしょう。芸西でも回帰ごとに相当探していました。今回も完全に視野外でした。
 最後の「CK06X01A」は最近リニア計画で発見された新彗星ですが、北の天の川の中で多くのフィルムが恒星と重なっていました。16等星で15cm以上の写真(CCD)で観測可能ですがコマは20″位で尾はありません。門田健一さんは15.9等と観測されています。

 まぼろしのデニング彗星の光跡を追っているとき11月の下旬でしたか、位置がこれも消えた彗星となっているスキッフ・香西彗星の位置と1度くらいに接近していることに気が付きました。この彗星も随分追いかけたのですが見つからず、毎回「彗星年表」に捜索予報をだしているのですが、計算者の村岡健治氏によると、位置も相当に狂っている可能性がある、とのことでした。何時の日にかリニア等の捜索の網にかかるのでしょうか。

 芸西の60cmは重大な故障をかかえながら、腕でカバーして観測を続けています。

 芸西で発見した4つの小惑星が最近命名されましたが、なかでも羽根田利夫さんを記念した「Haneda」の確定は良かったと思っています。氏の発見した「羽根田・カンポス彗星」も行方不明で「其の内芸西で再発見します」と約束した言葉が20年たったいま重く私の心にのしかかってきます。羽根田さんの魂は小惑星(23504)となっていま宇宙で自分の彗星を求めてさまよっているに違いありません。
    PK07A010   2007 01 11.42569 23 00 44.51 -04 59 13.1          15.5 T      372
0002P          2007 01 09.41649 23 14 47.90 +03 17 37.1          17.5 T      372
    CK06X01A   2007 01 11.44097 02 27 18.60 +53 08 30.4          16.5 T      372
    CK06X01A   2007 01 11.45556 02 27 18.84 +53 08 20.4          16.3 T      372
観測は60cm F3.5反射鏡による。
372は芸西天文台の観測所コード。
観測者は関 勉。


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