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思い出の彗星

ウェスト彗星彗星
C/1975 V1-A (West)

40cm鏡の中のウェスト彗星

 1975〜76年に見えたウェスト彗星の尾は実に変化に富んで美しかった。あるときには3本であったり、またある日には虹の如くに拡がった。そしてあるときには1本の太い綱の如く捻じれて立ちのぼった。しかしバラエティに富んでいた割にはそれほど長い尾ではなく、40cm鏡の3度の視野内に収まった。非常に幅のある尾で、長さは長い時でも全長は5〜6度の尾であったと思う。1976年3月の中旬に撮った芸西の40cm鏡のクローズアップ写真では、この彗星の尾のディテールが実によく描かれている。普通フィルムによる小さなカメラでは、こうし微細な様子がつぶれてしまうのだ。
 この頃主にプロが使用していたコダック社の103aのガラス乾板は優秀であった。青に強い103a-Oのプレートを使用することによって、青い彗星の尾が実に克明に描かれたのである。コダックのプレートにはこの他赤に強い103a-Eも存在して、ガス星雲のような天体が綺麗に写しだされた。そしてピントの良いのもガラスの平面性である。普段悪いと思っていたレンズが乾板の使用によって本来の実力を発揮し蘇ったのである。しかし難は高価であった。製造を中止する1990年ごろには6×9cmのいわゆる名刺判のプレート1枚が日本円で800円もしていたのである。その頃の芸西では一晩に10枚は使用していたのである。当然個人の懐が危なくなってくる。財政難で天文台が倒産する前にコダック社も時代の波(CCDの普及)に乗れず製造を中止したのである。芸西では1980年に完成した60cm反射鏡と、この103a-O乾板とのコンビによって周期彗星の検出や微光の小惑星の発見へと発展していった。
 そしてやって来た1986年のハレー彗星の観測へとドラマが拡がっていくのである。


1976年3月14日 5時00分(J.S.T)から6分間露出
40cm F5反射鏡 103a-O



Copyright (C) 2006 Tsutomu Seki. (関勉)